読書感想223 人質
著者 佐々木譲
生年 1950年
出身地 北海道
出版年 2012年
☆☆感想☆☆
3億円を貸してくれという脅迫状が届く。貸してくれない場合は秘密口座をマスコミと東京地検にばらすという。受け取った北海道選出の国会議員は秘書に調査を命じる。そして一方、札幌の藻岩山の中腹にあるワイン・バーのラ・ローズで貸し切りのミニ・ピアノコンサートが開かれようとしている。集まって来た客の前に2人の男が現れ、出入口を封鎖する。一人は富山県警の冤罪事件の被害者で4年間服役して、真犯人が見つかって無罪になった男、中島。彼の要求は当時の富山県警の本部長に謝罪してほしいということ。ピアニストの来見田牧子はその本部長、山科邦彦の娘。中島は牧子に東京にいる山科邦彦に札幌に来て謝罪すべしと電話をかけるように迫る。その場には来見田牧子を含めて家族が4人と、老夫婦2人、ラ・ローズのオーナーの浅海奈津子、ウェートレス、そして客として来ていた、小島百合巡査部長。犯人グループが2人に対して、人質は9人。
中では小島巡査部長が犯人たちを観察し、事件のあらすじを解明していく。外では同僚の佐伯宏一警部補が、人質と犯人たちの経歴から事件の全貌をつかんでいく。
二つの事件が発生しているので、説明が長くまた警察官の生活や札幌市の描写でまどろっこしい部分もあるが、二つの事件が結びつき事件の概要を小島巡査部長がつかんだ所からテンポが速くなり、一気に読ませる展開になる。最後はジャズバーで捜査官たちがサックスを楽しむ場面で終わる。おしゃれな終わり方だ。全体に上品で泥臭い警察物とはずいぶん違う。