『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

翻訳(韓国語→日本語)不便なコンビニ(三角おにぎりの用途)3-3

2024-08-26 19:06:15 | 翻訳

※韓国語学習のための翻訳で営利目的はありません※

著者:キム・ホヨン

 

不便なコンビニ(三角おにぎりの用途)3-3

 

 それから、不思議なことにドッコさんと目が合うと、理解しがたい気持ちとうっとうしい感じは消えて、妙な安堵感が生れ始めた。しかし、それがソンスクさんだけではなかったのか、コンビニの午前は少しずつ日差しの方向が変わるように、その雰囲気も変わっていった。

 コンビニは高いと言って万屋やスーパーしか出入りしない町のお婆さん達が近所に寄るようにガラスのドアを開けて入ってきてうろうろし始めた。お婆さん達はコンビニのあちこちで掃除しているドッコさんの背中を突っついてあれこれ訊ね、彼はお婆さん達を引っ張って陳列棚の間を行ったり来たりしながら、ツープラスワン、あるいはワンプラスワンの商品を紹介した。

 「これやこれ・・・すれば、ほ、本当に安く・・・持ち帰れるのです。」

 「それで、こう買えば、スーパーよりも安いだろうね。」

 「コンビニがただ高いのではないし。この小父さんがこういうものを全部教えてくれるから、とてもいい。」

 「私達は良く見えないし、こんなものは読めない。一つ買えば一つ余計にくれるって、どうしてわかるのかい、どうしたら信じられるのかい?」

 ドッコさんはお婆さん達が選んだ商品を籠ごとに持ってきて、ソンスクの前で下ろして、歯を見せて笑った。その姿がまるでボールを取ってきてお八つをねだるゴールデンレトリバーを連想させた。しかし、彼はソンスクが支払い計算を終えた籠一杯の商品を持って、そのままお婆さん達と出かけるではないか?しばらくして籠を持って戻ってきた彼に理由を尋ねると、お婆さん達が持っていくには重く見えて、持って行ってあげたというではないか!これは何の軒先配達システムなのか?ソンスクは気づいたけれど、これ以降ドッコさんの敬老配達サービスのおかげで生まれたお得意先が午前の売上げをかなり伸ばしてくれた。休みになると、お婆さん達は世話をしている孫を買い物籠のようにぶらさげて通って来た。そんな子供達も飲み物コーナーでお婆さん達にお小遣いを出させる才能があった。

 「午前の売上げが伸びている。どうしたのだろう?」

 お姉さん社長の言葉にソンスクは自分が午前にどんなに頑張って販売に邁進しているかと騒ぎ立てた。ドッコさんが町のお婆さん達とその孫たちを相手に上手に客引きしていることは、しっかり隠したまますべて自分の手柄にした。勿論彼女も野心があるので、今はドッコさんを見てまず無駄口をたたきながら優しく応対し始めた。

 「最近もあいつに三角おにぎりをあげているの?私がいる時は少しも顔をみせないけど。」

 「今・・・来ません。家に戻ったと言ったのです。」

 「それを信じるの?最近半地下で家出した子供同士集まって生活していると言っていたけど・・・。」

 「行ってみたら・・・いなかったですよ。」

 「どこ?」

 「半地下です…。チャモンと子供達が一緒に暮らしていた所。」

 「まあ?そこへ何故?」

 「心配で・・・。しかし部屋を出てみんな・・・消えたと言っていました。」

 「ドッコさん、そんな子供達を思うのはいいけど、ドッコさんも早くきちんとした家を手に入れなければならないから?」

 「僕は・・・家が必要ではないです。それで・・・ホームレスだと言うことじゃないですか。」

 「今は違うじゃないの。立派な労働者で。」

 「僕は・・・まだまだ遠いです。」

 「遠いとは何が遠いの?」

 「何でも・・・遠いです・・・。」

 「本当に謙虚な人。やれやれ、私が今まで誤解して申し訳ないのがわかる?」

 「僕が・・・いいえ、僕こそ・・・今まで誤解させて・・・申し訳ありません。」

 「とにかくそこに住むのを止めて、どこかワンルームでもきっと探すわよ。人はきちんと寝なければならないから。」

 「お言葉・・・ありがとうございます。」

 彼は大きい犬が主人の言葉に従うようにうなずいて、うろうろしながら退勤ではない退勤をした。なんとまあ勤務時間から自分時間もさらに働いていくパートタイマーがどこにいるというのか?それでコンビニの売上げも上がり、ソンスク自身の仕事も容易くなったので、彼女は彼を信頼し始めた。多分熊だった彼が犬に見え始めたのもその頃からだっただろう。

 年末に先立ってお姉さん社長は、シヒョンが同じコンビニチェーンの別な店にスカウトされていったから、業務時間を調整しようと言った。スカウトだって?ドッコさんは無料配達するし、シヒョンはスカウトされるし、本当にいろいろするコンビニのアルバイトに違いなかった。ソンスクは自分もどんと構えるつもりで、勤務時間を延ばしてほしいと言うお姉さん社長の提案を快く受け入れた。そうしてシヒョンの業務時間をドッコさんとお姉さん社長と分けて勤務するようになり、いつもより2時間多く働いて帰宅するようになった。

新年になって仕事が増えると活力が落ち、がんばったが1歳年を食ったからなのか、彼女はすぐに疲労を感じた。家は家でさらにめちゃくちゃになっていた。ソンスクが2時間遅く帰るようになると息子は一人ラーメンを作って食べ、皿洗いや後始末は僕は知らないとそのままにしているのだった。勉強に集中しようとそうしたと思っても、部屋から聞こえるオンラインゲームの音が大きすぎて彼女の心を惨憺たるものにするばかりだった。

 要するに息子の奴は自分が家を留守にするほど取り散らかすだけで、まるっきり人生に役に立つことなんかしていなかった。ソンスクは息子に孝行や家事の分担を望むことはなかった。そのまま、息子が自分自身を助ければそれだけで充分だった。しかし、新年になって母の自分は仕事を増やそうとしても力が足りないのに、息子は30歳の世間知らずに留まっていた。いや、模範生だった中高生時代にたくさん遊べなかったことがやりきれなかったのか、不良青少年として人生をもう一度生きたいようだった。30歳予備校生がPC部屋で人を銃で撃って殺すゲームにはまった青少年の恰好をしていることが、本当に憂鬱で忌々しかった。

 我慢できなかった彼女は、退勤後息子の部屋をノックしたけれど、ゲームの騒音にノックは全く機能しなかった。彼女はすぐに取っ手を何度も引っ張ったが依然として閉まっていた。瞬間その取っ手が必要な時だけ母を捜す息子の冷たい手のように感じた。腹が立って彼女は壊すようにドアをたたき続けた。

 「ねえ!ドアを開けて!!お母さんと話そう!!」

 ゲームの騒音よりドアをたたく音と叫びがさらに高い音圧レベルになってから、やっと息子はドアを開けてごつごつした顔で彼女を見下ろした。

 「お母さんが何を言うかわかる。だからやめろ。」

 息子は少し前にゲームの中で飛び出してきた銃声のような言葉で撃った。脂ぎった顔は生活に疲れて、膨らんだお腹はショーツの上に飛び出していた。真冬にショーツとは・・・。家の中だけ引きこもってボイラーをぱんぱんに焚いている情けない恰好だった。紺色のスーツにきちんと刈ったヘアスタイルで初出勤した大企業の新入社員の姿は影も形もなく、家の外どころか部屋の外にも出ない、持て余しの厄介者になったのだ。 

 情けなく眺める彼女の表情を無視して、息子は部屋へ入って行こうとして、ソンスクは思わず息子の腕を爪が刺さるほどぎゅっと掴んだ。半袖Tシャツの下で捕まった腕が痛かったのか。息子はその瞬間ソンスクをぎょろっと振り返り、これに対してソンスクはけりをつけるという気持ちで、息子の腕をさらに強く掴んだ。

 「放して。僕は勉強しなくちゃ。」

 「嘘!あんた、一体全体何をしているの?えっ?」

 「お母さんが外交官なれと言うから!勉強していて少し休みながらゲームするぐらいで何の騒ぎだ?僕は勉強で名門大学に行って大企業に行って、全部試した人間じゃないか。勉強のやり方はわかっているから、特に緊張しないで!」

 「やい、お前!それで何なの? そうして今のこのありさまなのかい?部屋に閉じこもってゲームだけして毎日ラーメンばかり食べてそれでいいのかい?家の外に出て散歩でもするか、どこか予備校でも入ったらどうなんだい!」

 「ああ!疲れる・・・そんな小言はうんざりだ!!」

 息子は一言叫んでソンスクの腕を振り切って入ってしまった。ばたん。ドアを閉める音に続いてがちゃん、ドアにかけるボタンの音が聞こえると、ソンスクの心の中のどこかのボタンも押されてしまった。ソンスクは壊すように再びドアを叩いた。自分に向かって目を白黒させながら、気が狂った人を見るように見ていた息子の目つきに応えるように、狂ったように叩いた。しかし、息子の答えは一層大きくなったゲームの音だった。更に、猛烈な銃声に彼女の全身はハチの巣になったようだった。

 ドアを叩いていた手が痛くなる頃、彼女は額でドアを強く打ち付けた。ドン、ドンドン、ドンドン。額がひりひりする頃打つのを止めてドアに背を向けた。涙が流れて胸が怠くなったけれど、ともに苦しみを分かち合う夫はいなかった。今まで息子自慢を思う存分していたので、故郷とか友達に情けない有様になった息子について、悔しいと訴えることもできなかった。息子が大企業に入社した時、彼女をねたんでいた同級生の陰口が遠くでこだまして耳に届くようだった。

 泣きくたびれて眠った彼女は間違いなく7時に起きた。うんざりしたことにその時間まで息子の部屋ではゲームの音が爆発していた。彼女はコートだけ羽織ったままいつも準備していた朝食も作らず逃げるように家を出た。本当に家と息子を捨ててどこかへ消えたい気持ちだった。しかし、彼女が行ける所は仕事をしなければならないそこだけだった。

 ドアを開けてコンビニに入って行くとドッコさんがカウンターにいなかった。振り返ると彼は新しく陳列したカップラーメンの縦と横を合わせるのに精神を集中していた。そこまでする必要がないと言っても、彼は強迫症患者のように商品一つ一つのラインを合わせて陳列することに努めた。呆れる息子と本当に比べられる行動だった。初めて息子がホームレスから抜け出したばかりの中年小父さんより出来が悪いと感じると自分が一層惨めになった。

 「いらっしゃいましたか?」

 商品陳列に熱中しながら彼がぽんと言葉をかけた。ソンスクはその時どっと溢れ出た涙にろくに返事ができなかった。慌ただしく倉庫に入ってユニホームのチョッキ着替えても涙は止まらなかった。あのホームレスと異なるところがない男より息子         が劣るなんて・・・。違う、ドッコさんは今堅実な社会人ではないか?今はたどたどしかった口調もとても自然になった。それに反して部屋の中でゲーム中毒の息子は、社会から離脱した敗北者で未来が暗い人間だ。あの父親の息子だろう、ソンスクが死んでもしまったら、人の役目も果たせず、ぶらぶらしていてホームレスか浮浪者になるかもしれない。そんな考えがしょっちゅう浮かんできて彼女はそのまま座り込んで泣いてしまった。                                                    

 
にほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログへ
にほんブログ村