①森の少女ローエラ 面白さ:☆☆☆☆
著者:マリア・グリーペ 生年:1923年 国籍:スウェーデン
出版年:1963年 邦訳出版年・出版社:1973年 (株)学習研究社
コメント:森の中に住む12歳のローエラはやっと歩けるようになったばかりの双子の弟と、船に乗って炊事婦として働いているお母さんの帰りを待っている。10月に帰ってくる約束が、お金持ちの一家とあと1年アメリカに行くという知らせが届く。冬の間、弟たちはお母さんの友達の家に、ローエラは弟たちが預けられた家の近くの養護施設に住んで町の学校に行くことになる。お父さんを知らないローエラは案山子をパパと名付けて大事にしている。森の中の生活が勤勉でしっかり者のローエラを作っている。町の暇な生活に退屈していまう。わずかなお父さんの情報からお父さんに会いたいと思うローエラがいとおしい。
②黎明に起つ 面白さ:☆☆☆
著者:伊東潤 生年:1960年 出身地:神奈川県横浜市
出版年:2013年 出版社:NHK出版
コメント:若き日の北条早雲の物語。北条早雲こと伊勢新九郎は室町幕府の政所執事を務める伊勢氏の分家である備中伊勢氏の出身で、備中伊勢氏も代々室町幕府の申次衆を務めていた。この物語では応仁の乱のさ中に兄と敵味方に分かれて刃をまじえることになり、実の兄を打ち取るという衝撃的な場面から始まる。そして最後の場面でも三浦半島を支配する三浦一族の長である道寸を一騎打ちで討ち果たす。どちらも実際にあったことではなく創作のような感じのする場面だ。北条早雲は時代を先取りし領国経営に長けた人物だが、自ら武器を取って戦うという印象は薄い。
③下町ロケット 面白さ:☆☆☆☆
著者:池井戸潤 生年:1963年 出身地:岐阜県
出版年:2010年 出版社:(株)小学館
コメント:テレビドラマ化もされた第145回直木賞受賞作。宇宙科学開発機構の研究員だった佃航平は、研究開発した水素エンジンを搭載したロケット発射に失敗した。そして亡くなった父親の佃製作所を引き継ぐために、宇宙科学開発機構を辞め、エンジンや周辺機器で売り上げを伸ばす。大手の帝国重工がロケット開発を手掛け、キー部品になるバルブの特許を佃製作所が保有していることを知る。スケールの大きい話だし。日本の中小企業への応援歌でもある。
④下町ロケット(ガウディ計画) 面白さ:☆☆☆☆
著者:池井戸潤 生年:1963年 出身地:岐阜県
出版年:2015年 出版社:(株)小学館
コメント:前作同様、佃航平と佃製作所が医療の分野に進出する。心臓の人工弁ガウディの共同開発をしないかという話が舞い込む。北陸の医科大学の医師と地方の編み物企業の小会社が佃製作所の技術力をかったのである。資金力という壁にもまして、大手の医療メーカーや、承認を得るための心臓学会のボスという壁がある。必要とする患者を見れば、仕事の意義がはっきりわかればやる気はおきるものだ。
⑤下町ロケット(ゴースト) 面白さ:☆☆☆
著者:池井戸潤 生年:1963年 出身地:岐阜県
出版年:2018年 出版社:(株)小学館
コメント:「下町ロケット(ヤタガラス)」の姉妹編で前作にあたるのが本書である。ヤタガラスで佃製作所の敵となるギアゴーストとダイダロスが登場する。帝国重工でも財前部長の敵役の的場取締役で出てくる。佃航平が特許問題で苦境に陥っていたギアゴーストを助けたにもかかわらず、競争相手のダイダロスのエンジンを採用する。その動機が大企業の下請けいじめ。一気に読ませる展開はさすがだ。