ヤマトタケルの夢 

―三代目市川猿之助丈の創る世界との邂逅―
★歌舞伎・スーパー歌舞伎・その他の舞台★

九月博多座大歌舞伎『三人吉三巴白浪』1

2005-09-13 00:19:02 | 歌舞伎
たまちさんの猿★征観劇記(1)

【序幕】

<両国橋西川岸の場>

まず本筋とは関係の無い一般人が5名登場し、
観客を江戸時代へと誘います。
ここでは後ほど登場する堂守源次坊が働いていたという
「坊主軍鶏」というお店の名前も登場。なかなかの名店?

手代十三郎が花道より登場し、事情説明。
とにかく「美しい」の一言に尽きる!妖艶で美しい!
この時は悩み事を抱えて意気消沈している
(自殺を考えるくらいだからそりゃそうだ)から唇までとにかく真っ白。
(歌舞伎初心者の私はほほ~と感心)着物の袂に石を拾い入れいざ身投げ・・・
というところへ土左衛門伝吉が登場し、十三郎を力づくで思い留まらせる。

十三郎が突き飛ばされて横座りになる・・・と思っていたのだが、
先日3階席から観た時は突き飛ばされ
完全に地面に寝転んだ風に見えました。(私の気のせい?)

伝吉のセリフ回しや声のトーンなど等、
右近さんの新しい一面を垣間見たような気分になりました。
昔の話も少し出ますが、現在では改心した本当に人の良い老人に見えます。
(でも自分の娘に「夜鷹」をさせている父親っていったい・・・??)

自分の仕事を説明したり、昨夜の十三郎の相手が自分の娘と説明する件りに
その辺の親としての気まずさというのも十分に出ていました。
でもあの強烈な作りには右近さんと最初気が付かない人も居たのでは?

<大川端庚申塚の場>

町人2人(金貸しと研ぎ屋の使い?)が登場し
名刀庚申丸についての話が出て、金貸しが庚申丸を奪い取る。
百両借りて庚申丸を買ったのに、持主が殺されたのでは借金の取立てが出来ない。
じゃぁその刀は俺の物だ!よこせ~!
百両のお金と庚申丸はこの物語の重要なキーポイント。

花道より伝吉の娘おとせが登場し、スッポンあたりで事情説明。
そこへ花道からお嬢吉三登場しおとせに道を尋ねる。
二人揃って本舞台へ上がるが、この二人のやりとりに客席どっと沸きます。

「ご職業はなんですか?」「何を商っているのですか?」
おとせが胸元からお金の包みを落としたのにお嬢が気付き、
「これは大事なお金」とおとせが拾い上げます。
「随分な売上がありましたね」爆笑。

この百両のお金を盗もう(もしかして夜鷹のござを持って歩いているおとせから
売上を強盗しようと企んで近寄って来てたのかなぁ?とも後で思いましたが、
「百両」と聞いた途端に表情がぐっと変わったし、う~ん)と
「何やら光が~」とおとせにすがりつくお嬢に対し
「ひと玉なぞ怖くは無い。怖いのは人間です」というおとせの台詞が
この物語を語り尽くしているような感じさえします。

しかし、この間にもお嬢はおとせの胸元のお金に
手をにじり伸ばそうとし観客はざわざわ。
そしてお嬢がお金を手にし男に豹変する瞬間場内大きく沸きます。

筋書きに掲載されている写真(お嬢と静御前が見開き)
を見ても一目瞭然ですが、お嬢は「男が女のなりをしている」、
静御前は「女」この辺の玉三郎さんの演じ分けは本当に天晴れ!です。

おとせからお金を奪い川へ突き落とす。
この時止めにはいった(?)町人から「庚申丸」をも奪い、
いよいよ有名な七五調の名科白!!
(背景の月が綺麗なんですが、これがいつ出てくるのか
毎度他の事に気をとられてしまい・・・。ヤマトタケルの赤い月の時みたい。
進歩していない自分にとほほ。)

朗々とうたい上げたところで、既に舞台上手にいた籠の中から
「ちょっとお待ちなさい」とお坊吉三。
背に挟んであった草履を取り出しゆっくりと籠から出てくるお坊の姿に
近くのご婦人方から「ほぅ~」と溜息。(だよね!と私)
今まで男に戻っていたお嬢が、お坊の登場でまた娘に戻ったり、
一部始終を見られてた事を知り男に戻ったり、
その都度客席は大きく沸きます。

お嬢とお坊がその「百両」をめぐって争いになり、
とうとう刀を抜いての立ち回り。そこへ和尚が仲裁に入り、
三人吉三勢ぞろい。
兄弟の契りの場面では和尚→お坊→お嬢の順に杯に血を注いでいましたが、
次にみた時には和尚→お嬢→お坊、
その次にはまた和尚→お坊→お嬢となっていました。これって一体??

和尚は手ぬぐいを口で裂いてお嬢の手に結んでやるのですが
(確か和尚のはお嬢が結んだ)、お坊は自分の手ぬぐいを懐から出し結びます。
この時、口を使ってキュッと手ぬぐいを結ぶ仕草に目は釘付け。
美しいんですよねぇ。すみません段治郎さんファンなもので(笑)

【2幕目】

<割下水伝吉内の場>

出勤前の夜鷹3人。2人がお金の貸し借りで揉めていますが、
(これは百文だったかな?)1人が仲裁にはいります。
この様子が、前の庚申塚の場を踏まえているので客席は大きく沸くのですが、
この時の仲裁役の笑子さん光ってます!夜鷹の世話役
(たぶん現場監督けん用心棒)が現れ、伝吉を奥から呼び、
おとせの行方がまだ判らないことを告げる。猿四郎さんステキ!

この時にも「身持ちの軽い娘ならともかく・・・」という台詞があるのですが、
「身持ちの硬い真面目な娘」が夜鷹をするという社会構造っていったい??
お金を持ったまま帰ってこないおとせが心配でたまらない、
「めったに物を拾うもんじゃない」と呟く伝吉。
この台詞けっこう重いです。後の展開を暗示するような台詞。

「お金を拾ったこと」「子供を拾ったこと」「(捨てる)命を拾ったこと」
拾ったことが事の発端でありさらに絡み合う因縁への鍵?

おとせの行方がわかったら直ぐ知らせるという事で、皆出て行くのですが、
ここへ入れ違いで八百屋久兵衛とおとせが花道より登場。
寿猿さん若々しくてとてもよく似合ってらっしゃいます!
ここで伝吉・おとせ・十三郎・久兵衛がそろいます。

最初はお互いの子供をそうとは知らずお互いが助け・・・
とってもいい感じだったのですが、
久兵衛が十三郎が拾い子でありそのいきさつを明かすと、
伝吉の様子が一変。
(自分が実父でしかもこの双子がそうとはしらず
恋仲になってしまっているんですからねぇ)
久兵衛が帰り、十三郎・おとせが別室へ行くと
(再会した時ははにかむようなとても可愛い様子だったのに、
この時のおとせさんはとても積極的。
一方十三郎さんはいたって生真面目)

伝吉はどうしたものかと思案にくれてしまいます。
百両のお金は自分が何とか・・・とは言ったものの。
(実際のところどうするつもりだったのでしょうね?)
そこへ和尚吉三が登場し、
伝吉へ手土産だと百両を渡そうとしますが伝吉は固辞。
元々おとせからお嬢が盗んだ百両
(それも十三郎が落とした)なんですがねぇ・・・。

この辺になってくると韓ドラ観てるみたいなもどかしさすらあり(笑)
もう既に自分の犯した悪事の因縁・報いを身に染みて感じているので、
どうせろくな出所ではないお金に手を出しこれ以上罪を重ねたくない・・・
というわけです。(偉いぞ!伝吉)この辺の葛藤する様子、
何とも言えず名演技です!
「もう斬首(晒し)になるまで会わないぜ!」
と捨て台詞を残し去るものの気になる和尚は裏口へ周り、
そこで伝吉の独り語りを聞いてしまい事情を全て知ってしまいます。
こっそり仏壇に百両を供え立ち去る和尚。

そこへおとせに気がある町人が花道より登場し和尚とすれ違う。
おとせを嫁に欲しいが、あの悪の和尚が兄というのは嫌だなぁ・・・。
自分の悪事を詫び亡き妻にお線香でもと思った伝吉は
仏壇の百両に気がついた。

ちょうどその時、おとせの事を伝吉にかけあってみようと声をかけた彼を
和尚と勘違いし、「まだ居たのか!これを持って帰れ!」と
百両を戸口の外へ投げる。「これは百両だ!」と拾って逃げる声を聞き、
伝吉は和尚では無かった事に気付き慌てて
後を裸足で追いかけて花道を退場。
着物の裾をめくって足の付け根の彫り物(?)を
チラチラさせつつヨロヨロと行く伝吉の姿に
客席はどっと沸いて拍手はくしゅ

でもさぁ~伝吉と知り合いなのに、
何でお金拾った時は誤魔化そうと逃げるかなぁ?
おとせを嫁にしたいんじゃないのあんた?と思っちゃいますね。

<本所お竹蔵の場>

百両を拾って逃げる男(すみません名前忘れました)
「もう八つか。暗くなってきたしこの辺は物騒なんだよなぁ」
そこへお坊が登場。お嬢の時は「貸してくれ」ですが、
この時は「よこせ!」です。男は元々拾ったお金だし
命が欲しいから物分りがよい。

「あんまり素直に差し出されてもなぁ・・・」というお坊の様子はとても可愛い
・・・色悪なのに。でもこういうとこ好き。
きっと元はいいとこの坊ちゃんだという事の現れでしょう。
追い剥ぎしないで着物は免除。
男が去ると、「そのお金を貸して下さい。」と伝吉が登場。
実の息子がお金を落とし養家へ迷惑がかかると「実の息子」発言。
またその百両の事情を説明し、
「娘を売ってでもお返ししますから貸して下さい。」と嘆願。
(おい、おとせを売るんかいっ!あ・でも十三郎とは結婚できないもんねぇ)

「捕まったら死刑という危険を犯して手に入れたこの金は渡せない!
額の傷痕からして堅気とは思えないから、その話もでまかせだろう」とお坊。
するとここで伝吉は「おい若造、言いたい事はそれだけか!」
と声のトーン豹変。この変わり様がたまりまっしぇん!(←なんで博多弁?)
もう悪事を働かないと改心し首にかけたお数珠を引きちぎり、
力ずくでも取り返すと飛びかかる・・・が、
空しく切り殺されてしまうのです。
お年だというのもありますが、拾った棒ではねぇ。

余計な殺生しちゃったなぁってオーラ出しつつ、
お坊は刀に付着した血を伝吉の帯紐で拭いてました。およよ。
そこへ伝吉を探しに来た十三郎とおとせが花道より登場し伝吉の遺体を発見。
隠れていたお坊はじわっと花道へと周る。お坊の遺留品を見つけたおとせに、
お坊はすっぽん辺りでしゃがみ、
石か何かを拾って投げて2人の持ってた明りを消した(んじゃないかな?)
とにかくこの時の段治郎さんの色悪ぶりが鮮烈で、
すみません他の記憶がありません。

―ここで30分の休憩です―

自分の妹が奉公する家に用立てたい百両、
自分の息子が落としたから弁償したい百両、
持っていく先は同じ相手なのに・・・。
悪人時代の伝吉が双子の息子を捨てた事を説明するのに
「女の子は金になるからと手元に残し」
また改心した現状でも娘の仕事は夜鷹だし、
いざとなりゃ娘を売ってでもって・・・
時代とは言えちょっと複雑な心境になったりもしますね。

ところで、例えば「遊女」として売るのと
「夜鷹」だと後者の方が地位が低いような
印象を持ってしまってましたが、違うんですかねぇ?
日常の自由は後者の方がありそうですけど。


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2 コメント

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嬉しい~\(^o^)/ (yaya)
2005-09-13 00:27:18
ご遠慮されるのを無理を言って

観劇記第一弾送っていただきました。

たまちさん、ホントにありがとうございます





筋書き手許になくて、これだけ詳細な感想

素晴らしいです!嬉しいです!



当ブログはご贔屓原理主義(笑)ですので、

「主観」「想いいれ」たっぷり大歓迎です~。





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待ってました! (紅娘)
2005-09-14 17:08:26
博多座のご報告、首を長くして待ってました



これから、観劇される方もよろしくお願いいたします
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