ヤマトタケルの夢 

―三代目市川猿之助丈の創る世界との邂逅―
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マクベス07 大阪公演観劇記

2007-04-25 00:52:11 | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ
 也子さん

こんばんは。
大変遅くなりましたがちょっと感想書いてみました。
(年度初めは通常業務以外のものがいろいろとあって
挫折しようかなーと思ったんですが、この演目は
好きなので、頑張ることにしました(^^;))

同じ作品を違う演出で観るのって面白いですね。
どっちが好きかは意見の分かれるところでしょうけれど
私は…06バージョンかなぁ。
(私の持ってるシェイクスピア劇ってイメージが
あんな雰囲気なので。)
今回07バージョン観て気付いたんですが、06の魅力って
「曖昧さ」にあったのではないかな、と。

王様が起きあがったら門番だったり、マクダフ夫人が
殺されてそのままマクベス夫人の侍女になったり、
小道具も笹が刀に、赤い布が血や縄になったりと
今、それが何であるか、観客がちょっと考える時間が
必要だった演出。(少なくとも、ニブ目の私はちょっと考える
ことがありました…(^_^;))
見ている者みんながそれを「○○だ」と共通認識するまでに
かかる間の曖昧な状態、それがあの作品全体に
まとわりついていて、その曖昧な雰囲気=不安定さに
なって、何とも言えない不気味な「ゴチックホラーな童話」的
空気を醸し出していたように思います。

何よりも前回バックミュージックとして使われていた
アカペラの歌声。
楽器が出す一定の音階ではなく、肉声の持つ揺れが
薄暗い能舞台に溶け込んでいて、善良な男だったマクベスが
あんな簡単に運命を転がり落ちていったのは、あの魔女達に
荒野で魔法をかけられたからだ、と思わせる空気が出来て
いたように思うのです。

今回の舞台ではそういった曖昧さがなくなり、予言によって
王への殺意を簡単に持ってしまったマクベス(=人間)の
権力への欲望とその心の弱さがよく見えるようになっていました。
二役されている役者さんも別人だと分かるような演出になっていて、
物語の筋が追いやすくなってましたし。
セリフも前回のようにドラマチックな抑揚ではなく、より心情を
伝えようとするような押さえたカンジで。
場面もちょこちょこ増えていて、話の展開が分かりやすかったので、
見やすい舞台だったと思います。
(でも…太鼓はこの芝居のテイストとちょっと違うような気がします…
あくまで私の好みですけど。)

ラストはやっぱり06バージョンのが好き(*^_^*)
無言・無表情で寄り添いながら歩く二人が何とも言えず
好きでした。
(いろんな事が想像できて面白かった。)
マクベス夫人待ちかまえバージョンもよかったけど、
二人で寄り添って歩く時間が短いのが残念。

こうやって見比べてみると、06は「劇」で07は「芝居」って感じがします。
(どう違うのか説明しろって言われるとちょっと困るんですが…
言葉の持つイメージというか響きからそんな気がして。)

ちなみに06のマクベスは「能」で、オセローは「狂言」なカンジが
しました。

07でMyハイライトだったのはマクベスが医者に夫人の容態を
「患者の具合はどうですか」と聞くところ。
愛しい人であり唯一の共犯者だったマクベス夫人が狂ってしまって
自分が味わっている地獄を共感できる人間がこの世に一人も
いなくなってしまった孤独感。
「患者」とよそよそしく呼ぶことで、自分が初めから独りきりで
この状況にいるのだと言わんばかりに振る舞って喪失感を
払拭しようとしてるみたいで、辛いなぁと。

と、まあ、こうやって去年の舞台を思いだして比べてると
06バージョンが観たくなってしまいました。
再演(再々演?)してくれないかなー。

【おまけ】

去年のオセロー観てて思ったんですけど、
オセローはホントにデズデモーナのこと愛してたんでしょうか?
ま、若くて綺麗な女、って意味では好きだったと思うんですけど、
彼女自身を愛してた、というのとは違うような気がして。
なんか、自分を有色人種と差別した白人への仕返し、みたいな
気持ちがあったように思うんですよねー、あの結婚。

男達は当然の如くに彼を「白人ではない者」として差別し、
ムーア将軍と呼ぶ。
そして愛しい妻でさえ、彼のことを「私のムーアさま」と呼ぶ。
名前ではなく人種を名前代わりに呼ばれるのはあの中で彼だけ。
違う種類の者だと日々呼ばれ続ける彼が、白人の中でも
取って置きの女を自分のものに出来たら、いい意趣返しになると
無意識に思ったとしてもおかしくはない。

デズデとの結婚を許可してもらうために事の成り行きを語るシーンで、
彼女が自分の生い立ちや波瀾万丈の人生に興味を持っていると
気付いて彼女の涙を誘うように話をしてやった、と言うところ。
これは意図的に彼女を落とそうとしていた、って読めないかと。
お互いに尊敬してる、みたいなことをデズデのお父さんに言ってたけど
それならなんでそんなテク使ってるわけ?みたいな。
(あのオセローのセリフを聞いて、ちょっとオセローがイヤなヤツに
思えました。)

そうなると、オセローは彼女のパーソナリティを愛してる訳ではない
から、ちょっと唆されただけであっさりその言葉を信じてしまう。
それは彼が真にデズデを愛していないから。
結婚できたのは、彼女が自分の求婚を受けるように、人生譚を
おもしろおかしく聞かせて、彼女の気持ちをミスリードしたと
分かっているから。
オセローにとっては、「結婚した」のではなく「結婚できた」だった。
だから、オセローは彼女から本当に愛されているとは思ってない。
なので、彼女の浮気話を簡単に信じてしまえる。
そして、簡単に殺してしまった。

そんな差別され続けた男の身勝手な復讐話、ってカンジがしました。
(ごめん、シェークスピアさん。こんな感想で。)

【余談】

オセローの幕開き、デズデとの秘密婚のシーンで、悪霊が
ハンカチ開いて見せるところ。
白地に赤のシミが付いてるの見て、「え、バー○ンの証?!」と
ビックリしてしまいました。
…イチゴの模様だったんですね……

えー、お後がよろしいようで。

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