燃えるフィジカルアセスメント

総合診療医Dr徳田安春の最新医学情報集

循環器フィジカル ケース5

2016-07-04 | 症例集

循環器フィジカル・ケース5

 

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症例5:

78歳女性

自宅で転倒により右大腿骨頸部骨折で昨日手術を施行された患者。

今朝より急性発症の呼吸困難感あり。

病棟ナースがコールされました。咳、痰、発熱、喘鳴など無し。

バイタルサインは、血圧 100/80 mmHg、脈拍130 /分、呼吸 34/分、体温 36.3度。

身体所見上、内頸静脈圧が15 cmH2O(胸骨角より頸静脈拍動の頂点までの垂直での高さが10 cmH2O)と上昇。

肺野の聴診ではラ音を聴取しないが、心音で第二音の肺動脈成分(P2)が亢進。

胸部単純X線写真では特に陰影はなし。

ECG  四肢誘導 S1Q3T3  胸部誘導 inverted T

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ピットフォール

 

骨折術後に急性発症する呼吸困難では、肺塞栓をまず考える。

脈拍が収縮期血圧値より大きくなっており、「バイタルの逆転」を示す。「バイタルの逆転」はしばしば、ショックの前段階(プレショック)のことがある。

 

この患者の内頸静脈圧は15 cmH2Oと上昇しているのがポイント。

すなわち、脱水や出血(低容量性ショック)、敗血症や迷走神経反射(血管拡張性ショック)では、静脈圧は低下するが、肺塞栓では静脈圧は上昇する。

 

 

その後の経過と解説

 

実際にこの患者は、造影CT検査で左肺動脈幹部に血栓陰影を認め、肺塞栓に対する治療が開始された。

 

最終診断:肺塞栓

術後呼吸困難+CXR正常+頻脈+頻呼吸→肺塞栓を考慮

高度の肺動脈圧増加でP2亢進

重症肺塞栓→閉塞性ショック→頸静脈怒張

 

 

治療:血栓溶解療法+抗凝固療法を施行。その後、症状軽快。

 

 

症候別“見逃してはならない疾患
徳田安春
医学書院

 

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