ふぇみにすとの雑感

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「ジェンダー」万能論もちょっと変

2006-10-23 01:22:58 | フェミニズム
前から気になっていた、大阪の集会で出されたという、「今こそいるねん『ジェンダー平等』宣言」について一言。

しかしその一方で、「男女平等」という言葉を口にしたとたん、必ずと言っていいほど持ち出されたのは「男らしさ」「女らしさ」の尊重でした。今度は、人々を男女二分法で切り分け「らしさ」を尊重させたうえでの平等、つまり「条件付きの」平等を強いる声と闘わねばならなくなったのです。



これ、いつ、どこで、誰が「男女平等」という言葉を口にしたとたん、必ずといっていいほど「男らしさ」「女らしさ」の尊重を言い出したのか、具体的に説明してほしいものだ。
女性差別撤廃条約批准と、家庭科共修の実現によって、少なくとも政府・文部省レベルでは、男女同一カリキュラムになり、「男らしさ」「女らしさ」の尊重などとは言えなくなっていたはず。バックラッシャーが言っていたということなのだろうか。東大のジェンダーコロキアムのときは、文部省がずっとこういっていたという発言があったりしたが、それは歴史認識が間違っているだろうと。そして、少なくとも女性運動で「男女平等」をいっていた行動する女たちの会などは、男女特性論などとっくの昔に(70年代から)超えた議論をしていたわけで。
(もちろん、「男女平等」という概念が「男女」というカテゴリーを温存するものだという批判はありだと思うが、この場合の男女特性論云々という批判に関しては、歴史認識が間違っているだろうと私は思う。)

と、ここまでは、私が何回も繰り返し主張してきたことの、またまた繰り返しだったわけだが、この宣言、次のように発展していく。

 
ところが、この鉄のように重い扉の鍵をはずす力を持って登場したのが「ジェンダー」という概念であり、言葉でした。この新たな言葉こそ、私たちがずっと求めてきた平等をもたらすのに不可欠な表現であり、1995年の第4回世界女性会議で地球上の全ての女性問題を解決するキーワードとして認められて、私たちを新しい夜明けに導いたのです。


私はこの集会は行ってないが、意味のある情報共有や意見交換がなされたのかもしれない。そして、「ジェンダー」という言葉が攻撃されている中で、ジェンダーを守りたい、素晴らしい概念だと主張したい、という気持ちはわかるし、確かにフェミニズムにとって重要な概念だったのは事実だ。

だが、「重い扉の鍵をはずす力」とか「新しい夜明けに導いた」ってのはすごすぎだ。神々しさすら感じさせてしまうではないか。そして、この記述だと「ジェンダー」概念が北京会議で「認められ」た以前の、フェミニズムの長い長い蓄積を、この言葉が北京会議で『認められ」たことひとつでがらっと変えたみたいな認識になってしまいそうだが、これはちょっと違う気がする。

それに加えて、ジェンダーが「地球上の全ての女性問題を解決するキーワードとして認められて」というのは、あまりに言い過ぎだ。「ジェンダー」だけで全ての女性問題は解決しない。エリート女性の問題は解決するのかもしれないが、「ジェンダー」に加え、セクシュアリティ、人種、民族、階級、障害、「第一世界」と「第三世界」の格差問題などなど、様々な要素を同時に、重層的なものとしてみていくことによって、女性が抱える様々な問題はようやく解決されていくわけだろう。

「ジェンダー」を守ろう守ろうとするばかり、「ジェンダー」概念がすべてを包括する概念かのように捉えられてしまうことで、ただでさえ軽視されがちな、他の様々な差異の問題がかき消されていってしまうことを危惧する。


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6 コメント

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Unknown (DH98)
2006-10-23 08:03:40
久しぶりにコメントします。
ともみさんの意見に同意。
これって「言葉の神格化」かな。
「言葉」は「ことのは」つまり「事の端」という面もあって、
言葉に振り回されると本質を見失うことがあります。
リンク先もざっと読みましたが、
言葉への思い入れが強すぎるように思います。
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Unknown (みん)
2006-10-23 16:07:02
なんかすごいですね。リンク先の全文も読みましたが、なんか電波出ちゃってる感じで引きました。

>「男女平等」という言葉を口にしたとたん、必ずと言っていいほど持ち出されたのは「男らしさ」「女らしさ」の尊重でした。
この文章主語がないから、誰が言ったかわからないですが、わたしもフェミニストの中ではそんなこという人聞いたことないです。最近のバックラッシャーからはよく聞きますけどね。
男女平等よりジェンダー!ジェンダーすげー大事!っていいたいのはわかるけど、もう少し文章に気を使わないと突っ込まれて自爆しそうではらはらです。(^^;)
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Unknown (ともみ)
2006-10-24 12:39:13
DH98さん、たしかに「言葉の神格化」ですよね。言葉にこだわりすぎる
あまり、本質を見失っているのではないかという恐れを感じます。
みんさん、やっぱり「電波出ちゃってる感じ」にうつりますかー。たぶん
共同作業でつくった文なんじゃないかと想像しますが、誰か関係者で違和
感表明する人とかいなかったのだろうか。。
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Unknown (HAKASE)
2006-10-24 21:31:30
ども,最初の引用についてなんですが,主語(誰が)は「男女平等に反対する人」なんじゃないですかね….リンク先を読んでみて,僕にはこの主語が「政府・文部省」や「女性運動の活動家」とは思えなかったです.ただ,主語が不明瞭なのは確かで,誤解を与える可能性があるとは思うんで,主語を明確にした方がいいと提案するのが良いんじゃないかなぁと思います.
あと,この宣言自体が「言葉狩りに反対するための声明」という側面をもってるようですし,その意味で「言葉」に焦点を置いた文章になってるのは僕は理解できるし,政府等の言葉狩りの問題については,それはそれでちゃんと考えるべきなんだろうとは思います.
だけど,確かに山口さんの言うように,2つ目の引用部分や,それ以降の文の中には,僕も表現がおおげさすぎるように感じる部分が結構あったし,「言葉」に依存しすぎな印象が(特に最後の方)あるとは思いますし,その点は同意見です.
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Unknown (Yoko)
2006-10-25 08:38:45
最初に、誤解されてるようですが、「電波」は発信するものではなく、受信するものです。
「宇宙人がオレに向かって電波を出している…」ていうのが元ネタですから。

それと表現の問題ですが、戦ってる相手が、人の心を掴む技術にもっともたけた宗教関係者とか政治家でしょ。だから、マスコミ業界とかそっち方面の人の知恵も借りて、戦略を練ってほしいです。
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Unknown (Yoko)
2006-10-25 08:42:56
例えば「敵」はこんな「手法」を使っているという例が、ICUのジェンダー研究センターのブログに紹介してありました。もちろんこれを真似ろというつもりはないけれど。
http://subsite.icu.ac.jp/mt/cgs/post_38.html
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