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宙の果てまでも『銀河鉄道の父』

2018年08月03日 | 読書

何やら不思議なタイトルだが「銀河鉄道」から連想したとおり、宮沢賢治とその父との物語である。出生から三十代後半で死ぬまでの賢治の生き様がほぼ忠実に描かれている。ただ伝記ものと決定的に異なるのは家族愛、特に父親の息子・賢治に対する素直な愛情。賢治から父への思い。それらが、えも言われぬ味わいで面々と綴られているのだ。だから賢治7歳のころ赤痢になるが、<看護婦ごときにまかせられぬ>と隔離病舎に泊まり込んで看病して自らが病気になる。そうした<父親でありすぎる>ことのエピソードが賢治の進学、家業を継がずに家出上京や農学校教員、売れない詩集・童話を書いているとき、度重なる病の床など、それぞれの場面展開に登場。言葉や心情として語られ、背景に描かれるのは岩手・花巻の自然や方言の土の匂い。最後まで引き込まれるように読み進んだ。賢治の死後、訪ねてきた孫たちに「雨ニモマケズ」の全文を朗読し、その意味を解釈する最後のところ。<(道徳的な意味ではなく)鉛筆を持って、ことばで遊んでただけ>と。作者の術にはまったのかもしれない。遺作のメモとも言われる一文、かって文学的評価をめぐって「雨ニモマケズ」論争があったとか。何度も読み返しては考え込んでいる。

          

 



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