淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

「海に往く。たった独り、真っ青な海と空が広がる海に往く。遠く、遠く離れた海に往く」

2015年08月10日 | Weblog
 夏休みを貰う。
 貴重な夏休みを一日貰う。

 独りで海に行こうと思った。
 この街のいつも見ている海じゃない海。ランニングしている時にいつも伴走するように横に佇んでいる海じゃない海。
 誰かに顔を見られて、声を掛けられたり肩を叩かれたりするような、そんな近場の海じゃない海へ行こう。

 「河北新報」に連載しているコラムの原稿も書き上げたし、本当は今年出版する予定だった音楽評論集と映画評論集も、もう一度書き直し始めようとその準備も始めたし。新しい小説も書き始めるつもりだし。

 聴きたい音楽CDだけはちゃんと車に入れて、朝の8時には家を出る。
 今日は鈴木雅之の「オールタイム・ベスト」4枚組。
 途中でガソリンを満タンにして、薄曇の街を抜けてひたすら南下する。

 今日だけは何も考えまい。今日だけは仕事の煩わしさからとにかく抜け出そう。そう思うのだけれど、思考回路はそう簡単には変わらない。
 あのことや、そんなことを考えては、腹が立ったり怒りを覚えたり落ち込んだりする自分がいる・・・。

 街へと着いた。
 お昼になる。
 鰻を食べる。
 クーラーの効いた店で食べる鰻はとても美味しい。

 隣の席で、流暢な標準語を話す男性二人が、向かい側に座った地元の中年女性と何やら話し合っている。
 建築関係の人間だろうか、都市の薀蓄やまちづくりについて語っている。

 外に出ると、気温は36度。
 暑い。とてつもなく暑い。

 仕事の電話が入る。
 何処に行っても仕事はついて来る。

 街の中心部を抜けて、海に出た。
 海水浴場が見える。子どもたちが何十人も浅瀬で遊んでいる。大人たちも一緒になって水際で戯れている。

 それを横目に、もっと海岸の奥深くを目指して車を飛ばした。
 太平洋岸を望む大海原に、遠くタンカーらしき船が滑っている。
 何処までも続いている海岸線に白い波が打ち寄せ、空は彼方まで広がっている。

 道路わきに車を停め、砂浜まで歩いた。
 遊泳禁止場所らしく、泳いでいる人間は誰もいない。
 ただ、30代らしきサーファーが一人、パドリングしながら沖へと向かっている。

 波打ち際まで進む。
 2メートルぐらいの高い白波が寄せては打ち返す。
 海岸線がずーっと遠くまで続いていて、その先は海水浴場のようで、豆粒みたいに小さな人の動きが見える。

 ゴーッという海鳴りが聞こえる。
 真夏の海風が気持ちいい。
 潮騒の香りがする。

 カモメが頭上を旋回している。
 海は果てしなく蒼く、空は天上まで届きそうに高い。

 独り、黙って荒波と対峙する。

 夏の美しさがここにある。








  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする