5月29日付けの「朝日新聞」と「読売新聞」の両紙は、何れも27日夜(日本時間28日未明)に行われた「第60回カンヌ国際映画祭」授賞式と閉会式における、河瀬直美監督の「殯(もがり)の森」が最高賞「パルムドール」に次ぐ審査員特別大賞「グランプリ」を獲得したニュースを掲載していた。
そして、「カメラ・ドール」(新人監督賞)対象作品として日本からエントリーしていた、「大日本人」を撮ったダウンタウンの松本人志監督と、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の吉田大八監督は、いずれもその賞を逃してしまったようだ。
それにしても、河瀬直美は凄い。まだ38歳にしてこの快挙である。
河瀬直美は10年前の第50回カンヌ国際映画祭においても、「萌(もえ)の朱雀(すざく)」で新人監督賞「カメラ・ドール」を受賞しており、邦画でのグランプリ受賞は、何と1990年に作られた小栗康平監督による「死の棘」以来となった。
そして、それにもまして驚いたのは、その29日の夜8時からNHKの衛星BSハイビジョンで、そのカンヌ国際映画祭グランプリ作品、「殯(もがり)の森」がオンエアされたということである。
これには本当にびっくりした。勿論、とても嬉しい驚きではある。
だって、「殯(もがり)の森」がグランプリを受賞したその翌日に、テレビで本編そのものが放映されるのである!
それも映画の封切りは、来月の6月29日土曜日から。つまり、まだ一ヶ月も先のロードショー公開だ。まずは東京のみの公開で、続く7月7日から大阪、その後各都市へと順次公開されてゆくという日程だから、これは快挙!
これまでも、例えばWOWOWなどでプレミア・ロードショーと称し、映画公開される前に事前TV公開された事も多々あるけれど、河瀬直美監督の「殯(もがり)の森」は、カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した、出来立てほやほやの話題性に満ち溢れた最新作映画である。
これは絶対に見逃す事は出来ない。
速攻で帰宅し、NHK衛星BSハイビジョンにチャンネルを合わせる。
河瀬直美監督にとって、劇映画4作目ともなる「殯(もがり)の森」は、日仏合作映画であり、河瀬直美自身が初めてプロデュースも手掛けた作品である。
新聞報道で初めて知ったのだけれど、河瀬直美は「萌(もえ)の朱雀(すざく)」で新人監督賞「カメラ・ドール」を受賞して以来、結婚、出産、離婚、介護、再婚と、様々な出来事に見舞われたようだ。
その事が、今回の「殯(もがり)の森」にも色濃く反映されている。
映画は、河瀬直美本人の育ての母の介護体験を基に、認知症の老人が、33年前に亡くした妻に対する「喪の仕事」をドキュメンタリータッチで描いている。
「殯(もがり)」の意味を調べたら、「貴人が死んでから本葬するまでの間、遺体を仮に納めて置いたこと。また、その場所。もがり。」とあった。「喪の上がり」から「もがり」になったらしい。その意味については、ラスト、画面の中で綴られる。
冒頭の、田園を含めた神秘的な森をカメラが俯瞰するシーン。それから、映画の随所に挿入される鬱蒼と茂った緑の森や風にそよぐ穂を鳥瞰するシーン。流れる雲の陰が濃い緑の草原を早いスピードで這ってゆくシーン。樹木が生い茂る暗い森を地面から仰ぐように見上げるシーン・・・。
それらが、映画の文体を区切る句読点のように、美しく挿入されてゆく。
物語自体は単純だ。
妻を亡くし、認知症で施設に入っている老人。彼はまだ妻の面影を追い続けている。
そして、その老人福祉施設で働く若い介護師の女性。彼女は幼い子どもを亡くしていて、それも自分のせいだと悔やみ、心に深い傷を負っている。
2人はある日、森の中に入ってゆく。
認知症の老人は、深い森の中で眠る妻の墓を探すために、彼女を振り切り、神秘的で深淵な森深く入り込む・・・。
静かな映画である。仏教的、日本的な思想性も映画の奥に流れている。自然、森、生きるものと死するもの、喪失と再生。
ただ、期待した以上の驚きや衝撃は、この「殯(もがり)の森」には、はっきり言ってない。心の中に深く刻まれるほどの素晴らしさが伴わないという程度の意味だ。
7月には早くも次回作、長谷川京子が主演する「世界中がわたしをすきだったらいいのに(仮題)」の撮影に入るらしい。勿論、「殯(もがり)の森」に続くその映画にも期待を掛けてみたいけれど・・・。
そして、「カメラ・ドール」(新人監督賞)対象作品として日本からエントリーしていた、「大日本人」を撮ったダウンタウンの松本人志監督と、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の吉田大八監督は、いずれもその賞を逃してしまったようだ。
それにしても、河瀬直美は凄い。まだ38歳にしてこの快挙である。
河瀬直美は10年前の第50回カンヌ国際映画祭においても、「萌(もえ)の朱雀(すざく)」で新人監督賞「カメラ・ドール」を受賞しており、邦画でのグランプリ受賞は、何と1990年に作られた小栗康平監督による「死の棘」以来となった。
そして、それにもまして驚いたのは、その29日の夜8時からNHKの衛星BSハイビジョンで、そのカンヌ国際映画祭グランプリ作品、「殯(もがり)の森」がオンエアされたということである。
これには本当にびっくりした。勿論、とても嬉しい驚きではある。
だって、「殯(もがり)の森」がグランプリを受賞したその翌日に、テレビで本編そのものが放映されるのである!
それも映画の封切りは、来月の6月29日土曜日から。つまり、まだ一ヶ月も先のロードショー公開だ。まずは東京のみの公開で、続く7月7日から大阪、その後各都市へと順次公開されてゆくという日程だから、これは快挙!
これまでも、例えばWOWOWなどでプレミア・ロードショーと称し、映画公開される前に事前TV公開された事も多々あるけれど、河瀬直美監督の「殯(もがり)の森」は、カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した、出来立てほやほやの話題性に満ち溢れた最新作映画である。
これは絶対に見逃す事は出来ない。
速攻で帰宅し、NHK衛星BSハイビジョンにチャンネルを合わせる。
河瀬直美監督にとって、劇映画4作目ともなる「殯(もがり)の森」は、日仏合作映画であり、河瀬直美自身が初めてプロデュースも手掛けた作品である。
新聞報道で初めて知ったのだけれど、河瀬直美は「萌(もえ)の朱雀(すざく)」で新人監督賞「カメラ・ドール」を受賞して以来、結婚、出産、離婚、介護、再婚と、様々な出来事に見舞われたようだ。
その事が、今回の「殯(もがり)の森」にも色濃く反映されている。
映画は、河瀬直美本人の育ての母の介護体験を基に、認知症の老人が、33年前に亡くした妻に対する「喪の仕事」をドキュメンタリータッチで描いている。
「殯(もがり)」の意味を調べたら、「貴人が死んでから本葬するまでの間、遺体を仮に納めて置いたこと。また、その場所。もがり。」とあった。「喪の上がり」から「もがり」になったらしい。その意味については、ラスト、画面の中で綴られる。
冒頭の、田園を含めた神秘的な森をカメラが俯瞰するシーン。それから、映画の随所に挿入される鬱蒼と茂った緑の森や風にそよぐ穂を鳥瞰するシーン。流れる雲の陰が濃い緑の草原を早いスピードで這ってゆくシーン。樹木が生い茂る暗い森を地面から仰ぐように見上げるシーン・・・。
それらが、映画の文体を区切る句読点のように、美しく挿入されてゆく。
物語自体は単純だ。
妻を亡くし、認知症で施設に入っている老人。彼はまだ妻の面影を追い続けている。
そして、その老人福祉施設で働く若い介護師の女性。彼女は幼い子どもを亡くしていて、それも自分のせいだと悔やみ、心に深い傷を負っている。
2人はある日、森の中に入ってゆく。
認知症の老人は、深い森の中で眠る妻の墓を探すために、彼女を振り切り、神秘的で深淵な森深く入り込む・・・。
静かな映画である。仏教的、日本的な思想性も映画の奥に流れている。自然、森、生きるものと死するもの、喪失と再生。
ただ、期待した以上の驚きや衝撃は、この「殯(もがり)の森」には、はっきり言ってない。心の中に深く刻まれるほどの素晴らしさが伴わないという程度の意味だ。
7月には早くも次回作、長谷川京子が主演する「世界中がわたしをすきだったらいいのに(仮題)」の撮影に入るらしい。勿論、「殯(もがり)の森」に続くその映画にも期待を掛けてみたいけれど・・・。