フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



    (「エビータ」上演当日のキャスト一覧)
 
今年も残すところあと僅かとなりました。
 先日、今年見たテレビドラマのことを振り返りましたが、他にもいろいろな小説・演劇・映画などを味わうことができました。その中で、このブログに書いていなかったことを少しだけ補足しようと思います。
 演劇関係で書いていなかったのは、11月にロンドンで見たミュージカル「エビータ」に関してです。なぜ書かなかったのかと言うと、このミュージカルの初演は1978年で、かなり古い作品を今になって見たので、ちょっと感想も書きにくかったというのがありました。
 ちなみに、この「エビータ」の音楽担当は、
「オペラ座の怪人」などで知られるアンドリュー・ロイド・ウェバー。初演時の主演はエレイン・ペイジでした。ペイジは「キャッツ」などでも主演を務めており、世界で最も有名なミュージカル女優の一人だったと言ってよいでしょう。ちなみに私は、1995年の「サンセット大通り」で主演のエレイン・ペイジを生で見ています(ちょっと自慢)。たいへんな熱演で、これまで私が見た演劇の中で、観客がもっとも興奮して全員がスタンディング・オベイションをしていたのがこの時の「サンセット大通り」でした(その時の劇場も今回と同じロンドン・アデルフィ劇場でした)。
 話を「エビータ」に戻すと、初演
からすでに28年がたち、マドンナ主演で映画化もされて、すっかり多くの方に知られたミュージカル作品となっています。
 しかし、私がロンドンで演劇鑑賞をし始めたのが1995年ですから、その頃もうすでにこの作品は公演されていませんでした。それで日本で四季版で見たり、映画で見たりしたのですが、やはりオリジナル版に近いものを見たくて今回再演されているのを機会に見てみることにしました。
 客の入りもよかったし、今回の主演のエレナ・ロジャー(アルゼンチン出身の女優さん)の演技もすばらしいものでした。とても小柄な女性で、最初はたいして目立たない地味な印象の女性なのですが、ペロンと共に上りつめていくにしたがって、カリスマ的な雰囲気を発していく様子がなかなかの見所でした。お客さんの層としては比較的高年齢の方たちが多いように思いましたが、皆さんおおいに楽しんでいたようでした。
 とすると、「今さらかな?」と少し思いながら出かけた私の気持ちは、間違っていたのかもしれません。初演から28年がたち、映画にもなり、すでにストーリーも曲もすっかり知られた作品ですが、だから「見に行く価値がない」わけではない。むしろそれだけ知られた作品だからこそ、一度オリジナルに近い舞台をみておきたい、あるいは何度でも見てみたいという気持ちが多くの人にはたらくのかもしれません。多くの人に受け入れられる作品には長い命がある、ということをあらためて感じた「エビータ」でした。



コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
ミュージカルは楽しい (しばわんこ)
2007-01-01 23:03:52
こんにちは。
ロンドンの「エビータ」は見たことがありませんが、劇団四季のは見たことがあります。カリスマ性を発揮していくエビータも魅力的ですが、私は群衆の場面が印象に残っています。同じように「レミゼラブル」の民衆が立ち上がる場面も好きです。今日の朝日新聞にロングランするミュージカルの魅力は、見る人それぞれが思い入れできるテーマや場面があるからではないか、と書いてありましたがそうだと思います。
ミュージカルは本当に楽しいですね。でもちょっと高いかも・・・・。
 
 
 
しばわんこさんへ (宇佐美)
2007-01-03 00:27:51
 宇佐美毅です。
 しばわんこさん、コメントありがとうございました。
          
 たしかに演劇鑑賞は少し費用がかかりますね。歌舞伎などは高い席もあるけど、かなり安い席もあります。欧米のミュージカルもそれに近いと思います。それに比べて日本のミュージカルは安い席はほとんどないので、もう少し価格の差をつけてくれたら、「高くてもいい席で見たい人」「安い席でいいからあれこれたくさんの舞台を見たい人」と、いろいろな人に来てもらえるのにと感じます。
 東宝系のミュージカルは有名な俳優さんが多くてそこに経費がかかっていそうですが、四季系はどこに経費がたくさんかかっているのでしょうね。
 日本のミュージカルの敷居がもっと低くなることを願っています。
 
 
 
私もミュージカルが好きです! (とみ)
2007-01-17 20:26:49
初めてコメントを書き込んでみました。「エビータ」もアンドリュー・ロイド・ウェバーが音楽を担当しているとは知りませんでした。私は「オペラ座の怪人」の大ファンなので、「エビータ」も是非見てみたくなりました。劇中使われた曲が頭から離れなくなるのが、良いミュージカルの特徴のような気がしています。
 
 
 
とみさんへ (宇佐美)
2007-01-19 22:00:16
 たしかにミュージカルを見終わって劇場を出た後も(時にも次の日もその次の日も)、ずっとその曲が耳に残って聞こえてくることがありますね。その点では、ロイド・ウェバーのミュージカルには、つい口ずさんでしまうような印象的な曲が多いと思います。「オペラ座の怪人」もそうですよね。
 そういえば、ロイド・ウェバーの最新作「ウーマン・イン・ホワイト」が今年日本で上演される、という記事が新聞に載っていました。私もこの作品についてHPに書いたことがあるので、日本でも見てみたいと思っています。「オペラ座の怪人」のような大ヒット作品にはなりませんでしたが、構成の面でも演出の面でも興味深い試みをしている作品だと思います。
 とみさん、コメントありがとうございました。
     
 
 
 
Unknown (とみ)
2007-01-22 15:28:59
「ウーマン・イン・ホワイト」も気になってきました。日本で上演されるんですね。チェックしておきたいです。
 
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