フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 




 昨日の続きですが、今年を振り返って、もうひとつブログに書かなかったことに絵画のことがあります。
 このブログには何でも好き勝手なことを書いていますが、小説・ドラマ・映画・演劇などのフィクション作品についての感想が基本になっています。それで絵画のことは書き落としてしまったのですが、11月にアイルランド国立美術館とエジンバラのスコットランド国立美術館でフェルメールを見たことが印象に残っています。
 フェルメールは以前から好きな画家の一人で、今までロンドン・ベルリン・ウィーン・アムステルダム・ハーグなどを訪れた時にフェルメールを見ることができたのですが、今年も何枚かの作品を見る機会がありました。
 フェルメールをこれまで見てきた中で一番印象に残るのは、やはり有名な「真珠の耳飾りの少女」で、この絵のみずみずしさは他とは比べられないという気がします。この作品が展示されているハーグ(オランダ)のマウリッツハイス美術館は、美術館といってもその名の通りマウリッツという人のお屋敷だった建物がそのまま使われています。そのせいもあって、他の大きな美術館に比べるととても落ち着いた、感じのいい美術館でした。しかし、その一方で、「真珠の耳飾りの少女」は、フェルメールの作品の中できわめて「特殊」な作品という気がします。フェルメールのことは謎が多くてよくわかっていないそうなのですが(そこにまた興味をひかれるのですが)、「真珠の耳飾りの少女」のようなアップの作品よりも、引いた位置から描いたもっと日常的な絵が多いように感じます。
 ダブリンのアイルランド国立美術館に所蔵されている「手紙を書く女と召使い」などは、その名の通りに机に向かって手紙を書いている女性とその隣に立つ召使いの女性とを描いています。ドラマティックなメッセージ性の強い構図を選ぶのではなく、日常の何気ない一瞬を描きとっている(しかしそれが何かのメッセージを隠しているかもしれないいと推測したくなる)点でフェルメールの特徴をよく備えており、評価・評判はそれほど高くないものの、実はもっともフェルメールらしい絵画だという印象を持ちました。
 来年はどれだけフィクションや芸術作品を鑑賞できるかわかりませんが、また多くの作品に触れて、その感想をこのブログに掲載していけたらと思っています。
 皆さんもよいお年をお迎えください。
                    


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