フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 バーレーン4
   (サポーターで埋まった国立競技場観客席)

 3月14日、男子サッカーU23(23歳以下)日本代表が、ロンドンオリンピックへの出場を決めました。この試合を現地(国立競技場)のスタジアムで観戦してきました。

              
 日本代表のオリンピック出場は5大会連続の9回目。1968年のメキシコ大会で銅メダルを獲得してから1996年アトランタ大会まで、28年間オリンピックに出場できなかったことを考えると、それ以降の5大会連続出場は実に立派な記録です。
 バーレーン1
  (試合開始前のセレモニー) 
             

 ちなみに、この5大会の出場国を調べてみると、5大会連続出場は韓国と日本だけです。前回の北京オリンピックまで4大会連続出場していたオーストラリアもイタリアも、今回は予選敗退が決定しています。あの強豪国ブラジルでさえ出場できなかった大会がある(アテネ大会)があるように、16か国しか出場できないオリンピックには、32か国が出場できるワールドカップよりも格段に出場の難しい大会なのです。
 もちろん、地域差というものも無視できません。特にヨーロッパのような予選参加国数の多い地域では、オリンピック予選を突破することが他の地域よりも特に難しく、5大会連続出場国が韓国と日本のようにアジアに偏っているのは、ヨーロッパなどに比べればまだアジアの中でのレベルの差が大きいことを意味しています。
 このような地域差はあるものの、5大会連続出場した韓国と日本は世界でたった2か国なのですから、それは十分称賛されるに値します。組み合わせ抽選に比較的恵まれ、世界ランクでは大きく差のある3カ国と同じ組だったことが幸いだったとしても、常にオリンピックに出場し続けられることは、世界と真剣勝負の場を持つという意味でもたいへん価値のあることです。
              
 バーレーン3
 (前半は日本優勢ながら、0対0のまま)

 ただし、前回までの4大会連続出場で、グループリーグを突破したのはわずかにシドニーオリンピックの1回だけ。前回の北京オリンピックではグループリーグ3戦全敗。ですから、5大会連続出場は立派なものの、本大会では結果を残せていません。
 ヨーロッパから3カ国(+開催国イギリス)、南米から2か国しか出られないという激しい予選を勝ち抜いてくるチームと互角以上の戦いをするのは容易ではありません。日本代表の試合を注意深く見ていきたいと思っています。
              
 バーレーン2
  (コーナーキックからバーレーンゴールに迫る日本チーム)

 ところで、オリンピックのサッカーに出場するのは原則として23歳以下の選手です(女子は年齢制限なし)。これはサッカーにおいてはワールドカップが最大の大会であって、オリンピックはそれと同格にできないという競技の事情によります。しかし、予選ではそうなのに、オリンピック本番では1チーム3人まで、オーバーエイジ枠といって、23歳を越える選手の出場が認められます。これもまた、オリンピックを2流の大会にしないため(つまり観客を呼べる大会にするため)の措置です。
 となると、オリンピックのサッカー競技とは、ワールドカップと同格にはできないというサッカー側の事情と、オリンピックを2流の大会にはできないというオリンピックの側の事情の両方を汲んだ、妥協の産物とも言えます。
 ことを日本に限ると、オリンピック本番でのオーバーエイジ枠は、これまでうまく機能してきませんでした。これは、予選とは異なるメンバーが入ってうまくフィットするかという問題に加えて、所属チームが有力選手をオーバーエイジ枠として出したがらないという事情もあります。フル代表と違って、オリンピックは所属クラブから選手を借りる権利がありませんので、有力選手がオーバーエイジ枠として出場してくれないという問題も起こっています。(ドルトムントの香川真司選手はオーバーエイジではなく、オリンピック世代ですが、これほどの中心選手を所属チームは予選のための招集にOKしてはくれません。)
              
 このように、オリンピックのサッカーには複雑な事情が多く、手放しで楽しめるというわけではありません。ただ、諸事情はあるにしても、次世代のサッカー界を担うような多くの選手たちが世界の舞台でプレイするわけです。ですから、日本が勝つかどうかだけではなく、世界の有望選手たちの活躍を期待しながら、ロンドンオリンピックを見ていきたいと思います。
              


【3月16日付記】
 ロンドンの前の4大会しか調べませんでしたが、確かめたら、韓国は今回で7大会連続出場でした。たいしたもんです。また、オーストラリアも前回まで6大会連続出場。それが今回で連続出場が途絶えたということです。いずれにしても、こうした連続出場はアジアやオセアニアならではの記録(豪は今はアジア地区に移籍)。ヨーロッパや南米では困難なようです。
 ちなみに、私は前々回のアテネ大会出場を決めた試合、前回の北京五輪出場を決めた試合に続いて、3大会連続で出場決定試合をスタジアムで観戦しました(プチ自慢です)。

 2004年 3月18日 対UAE (3対0勝利) 国立競技場
 2007年11月21日 対サウジアラビア(0対0引き分け) 国立競技場
 2012年 3月14日 対バーレーン(2対0 勝利) 国立競技場

 前回の時のことはこちらを御覧ください。
   → 「北京五輪出場決定試合を観戦して」

 



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