10~12月期のテレビドラマ(冬ドラマ)の感想を書く2回目です。恒例のテレビドラマ批評として、放送されている作品の感想を書いていきましょう。前回の5作品に続けて、今回はプライムタイム中心に5作品の感想です。
『わたしの宝物』(フジテレビ系、木曜22時)
「「昼顔妻」「セックスレス」…新たに描く禁断のテーマは、「托卵」」という謳い文句。子どものほしい既婚女性(松本若菜)が主人公。しかし、その夫は外面の良さとは裏腹のモラハラ男。そのときに現れた懐かしい、そして優しい後輩(幼なじみ)…。と、ここまではありきたりともいえる定番の設定。そこから何が違うかというと、「不倫の恋」を描くのが中心ではなく、別の男との間にできた子どもを夫の子と偽る点がドラマの主眼のようです。その証拠に、その相手はすぐに国外に去って、しかも事故死してしまうらしいのです。となると焦点は子どものこと。「昼顔妻」「セックスレス」に比べるとロマンチックさのない話にも思えるのですが、その分これから「どきどき」「はらはら」または「どろどろ」を見せてくれるのでしょうか。
『モンスター』(フジテレビ系、月曜22時)
「”常識”にとらわれず、”感情を排除”して相手と向き合う、モンスター弁護士」という謳い文句。その主人公を趣里が演じます。初回を見る限り、主人公は変わり者ではありますが、”モンスター”とまでは見えませんでした。私の注目は脚本家の橋部敦子。『僕の生きる道』や『僕のいた時間』といったヒューマニズムあふれる作品を書いた脚本家で、一見するとこの作品は過去の橋部作品とは作風が違っているようにも思えます。初回末尾で「モンスター」は必ずしも主人公弁護士とは限らないという驚きをしかけていて、ただ”感情を排除”したモンスター弁護士の話にはとどまらない作品になるだろうという予感がします。
『ライオンの隠れ家』(TBS系、金曜22時)
「家族愛や兄弟愛の変化を描く愛と絆の物語が幕を開ける—」という謳い文句。「弟のために生きる兄(柳楽優弥)」と「自閉スペクトラム症の弟(坂東龍太)」、そんな兄弟が、目の前に現れた男の子を引き取って3人で暮らす話。初回を見る限り、「あれ、これNHKだったっけ?」と思うような特別に真面目な作品でした。子どもを引き取る話なら「マルモの掟」のような作品なのかな、とも思ったのですが、ここから男の子にかかわる謎がからんでくるようで、「ヒューマンドラマ」というよりは「ヒューマンサスペンス」なのだそうです。2回目からはそちらの要素が強くなってきました。期待はおおいに持てますが、「ヒューマンドラマ」+「サスペンス」が足し算になってほしいですね。引き算にならないことを願います。
『無能の鷹』(テレビ朝日系、金曜23時台)
「超・脱力系お仕事コメディ」だそうです。仕事ができそうに見えてまったく有能ではない女性社員(菜々緖)と、仕事ができなそうに見えて実は有能な男性社員(塩野瑛久)のコンビ。このアイデアには驚かされました。近年のテレビドラマはアイデアが出尽くしてきていて、何を見ても「似たようなドラマ見たなあ」と思ってしまいます。しかし、原作漫画があるとはいえ、この発想と設定は斬新だと思いました。とはいえ、私はこのような2人がいたら、組織としてはどう仕事させたらいいのかと、わりと真剣に考えてしまい、素直に楽しめませんでした。いけねえいけねえ、「脱力」できない私の悪い癖が出てしまいました。無能なのにすごい仕事できそうに見える鷹野(菜々緖)のキャラクターを楽しめばいいんですよね。
『バントマン』(フジテレビ系、土曜23時台)
「すべての道は野球に…コミカル&ハートウォーミングなオリジナルストーリー!」という謳い文句。正直に言って、それほど人気が出る作品とは思えませんが、よくぞこんな作品を制作するなあ、と逆に感心しました。「戦力外通告を受けた主人公を待っていたのはプロの球団ではなく一般企業。しかも送りバントのように誰かのためにチャンスを提供する「バントマンになれ」という指示を受ける。子どものころからヒーローとして花道を歩んできた生粋のホームランバッターが、これまでの生き方とは真逆の 地味な“バントマンの道”を歩むことができるのか…?」という話。しかも中日ドラゴンズの全面協力!「そんな企業あるかい!」とツッコミたいのをこらえて、この作品を大真面目に制作した関係者に敬意を表したいと思いました。
※このブログはできるだけ週1回(なるべく土曜日)の更新を心がけています。