考えるための道具箱

Thinking tool box

◎落ち着きがない、とか。ながら勉強するな、とか。

2007-04-21 21:31:14 | ◎業
「授業中に落ち着きがありません」って通知表に書かれ続けた。「ラジオ聴きながら勉強できるか?」って親にしつこく言われた。そんな人は多いと思う。ようは集中しろってことだ。いまも同じような教育的指導がなされているのだろうか。

もちろん、社会にでると、集中力は大きくモノを言う。しかし、これには前置きがあって、“ノイズだらけのなかで、なんとかひねり出していく”集中力がモノを言う、ということにほかならない。

実際に、仕事の現場では、フィジカルな面だけでなくメンタル面でも落ち着きなくうろうろしながら、複数の課題にちょっとづつ噛みながら噛まれながら、物事をじわじわというかゴリゴリ進行させていくことが多いだろう。自分自身は落ち着きたくても、周りはそれを、つまりひとつのことだけに構えて集中することを絶対といっていいほど、許してくれない。ライフハックのノウハウなんかでは、朝早くきて自分だけの時間を持とうとか、人とのコミュニケーションを完全に遮断する時間をつくろうとか、すばらしい提案がなされていて、それはそれでじっさいにすばらしいのだけれど、その程度のことで問題が解消するのであれば、本質的にライフハックが必要のない人のライフハックのような気がしないでもない。

もはや、「落ち着きのなさ」とか「ながら」は全部ひっくるめて仕事になったということなんだろう。仕事というものはそのように変化したのかもしれない。10年前はそんなことなかった。じっくり腰をすえて何かムダことを考える時間は確かにあった。20年前になるとなおさらで、勉強のための勉強、みたいな牧歌的なことに割ける時間もあった。

それらのことは、いまはもう、仕事と並走してやっていくしかない。それどころか、仕事中に仕事を行うといったことはごくあたりまえの習慣になっているし、逆にそうしないと立ち行かないところもある。

案件Aのネーミング企画書と案件Bのプロモーション企画書を同時に作りながら、その間にいろいろなWEBサイトにアクセスしつつ明日書く予定の商品戦略企画書Cのイメージをつかんでいる。AとBを完成させたら、それをメールしたり、ストレージに上げている間、喫煙場に向かう途上、オフィスを散歩しながら、誰かに声をかけたり、かけられたりで進行案件の確認を行い、問題があれば解決したり、アイデアがあれば付加したりする。
現状の仕事のミーティングのその最中に明日の予定、明後日の企画を想起させ、想起することで、その材料を用いて、いまここのミーティングも発展的進めていく。もちろん、誰かの発言から思い出したことやハッと気づいたことは、この場でもっともふさわしい言い方はなんだろうか?と文脈最適化を働かせつつ声にだし、問題を凝縮させていくと同時に、新しい仕事へのヒントとして拡散させていく……もうなになんだかわからない。頭のなかはつねにポリフォニーだ。しかし、1週間たってみれば、なんだかいくつかの案件が片付いたり、1週間前にはなかった新しい仕事が構築され始めたりしている。

つまり、ひと昔まえは、忌避されるがゆえに、トレーニングすることもできなかった、落ち着きなく物事をこなしていく集中力、いくつかの思考回路をパラレルでしかもパフォーマンス高く解放していく集中力が必要になってきているんだろう。このスキルをわたしは、「じたばた力」「ながら力」と名づけたい。とりわけ、組織における上級者、部下をもつ上司は、かなり高度なレベルでこの技術を修得する必要がある。

でも、じつは、たとえば、ダイニング・テーブルでの勉強の効果なんてのも、「じたばた力」「ながら力」のレッスンになっているのかもしれない。

もっとも、案件が少なくとも「じたばた」したり、「ながら」でこなさざるをえない状態に陥っている場合もあるけれど、そういうのとはちょっと違うな。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
実は (kanamelody)
2007-04-22 22:47:19
ものすごく、激しく納得しましたw。

会社に入って、浦山さんと仕事をさせて頂くようになって、
いろいろ驚かされることは多かったですが、

最も驚いたのは、この日記に書かれているように、
「この人、こんなに落ち着いてないように見えて、
なんでこんなに物事こなしていけるんだろう」
ってことだったと思いますw。

あまりに落ち着かなくて、
大学受験のときなんて、椅子に自分をくくり付けて
すぐ立てないようにして、勉強していた私・・・。

落ち着かない人=仕事ができない人という、私の勝手な認識を覆していただき、
ある意味、すご~く勇気をもらった気がしますw。
>kanamelodyさま (浦山隆行)
2007-04-23 22:50:32
まあ、結局は何かを正当化しているだけのことかも
しれないですけれどね。ただし、まぎれもなく仕事の
環境は書いたような状況になっているので、
それをこなすための防衛的な技能ではなく
先制的な技能は必要ということかもしれません。

こんなことで勇気がでたといってもらえるのなら
いくらでも書きますよ。では。

コメントを投稿