考えるための道具箱

Thinking tool box

団塊/団塊ジュニアのほんとのところ。

2005-05-13 00:25:00 | ◎業
ほんとのところがどうか?というのはまあ別として、納得性の高い世代ラベリング2つ。
ひとつめは、5月11日付「日経流通新聞」の団塊ジュニアの調査から。よくよく読むと調査したのは『ファスト風土化する日本』(洋泉社新書y)の三浦展氏のカルチャースタディーズ研究所で、同書で提起されたコンセプト(地方の郊外化)も、現実に照らし合わせたとき納得性が高かったけど、今回の団塊ジュニア調査も、これまでの分析に比べ、より現実的のような気がする。カルチャースタディーズ研究所のWEBサイトをみると、この調査は継続しているようなので、少し追跡してみたい。

調査の内容は、以下の3ポイントにまとめられている。
(1)団塊ジュニア男性の48%は自分の属する階層を「下」と認識
(2)「独身貴族」は過去の存在。ただしパラサイト女性だけは例外
(3)「自分らしさ」志向は低階層の特徴。このタイプの消費者を狙うのは危険な戦略。


これまで、団塊ジュニアに対して、とってしまいがちだったマーケティング戦略とは、わりと逆に近い分析といえるかもしれない。つまり「団塊ジュニアはこだわり層、好きなものには金を使う」とか、「自分らしくありたい、という意識を狙う」とか、「(こだわりの延長としての)シンプル志向」とか、「30代のパラサイトがターゲット」といった発想への安易さを戒める形となる。

とりわけ「自分らしさ」とか「わたしらしく」とかといったコミュニケーションの問題。調査によると、「あなたが生活全般で大事にしていることは何ですか」という設問に対しその選択は、
◎団塊jrの高階層→「ゆとり」「仲間・人間関係」、「活動的・アクティブ」、「創造性」
◎団塊jrの低階層→「個性・自分らしさ」
ということらしい。この部分の心理に、ある種のルサンチマン的なものが働いているのか、といったところは、今後調査を継続していただきたいところだが、結果そのものは興味深い。

言ってしまえば、まあ金がないのはわかっていたが、「ほんとうに厳選した好きなものにしか金を使えない」、「金がないからシンプル」、「30代になってもパラサイトしている男性はプア」で、ほかを気にしてもしようがないから「自分らしく」あろうと思う、というところまでの理解の仕方に変換する必要があるということだろう。まあ、すくなくとも、これからは安易には団塊jr向け商品は開発できないだろうし、コミュニケーションに「わたしらしく」とかいったテクストを使うことに慎重になったほうがいいかもしれない(※1)。

いっぽうで、団塊世代においては逆に「高階層ほど個性・自分らしさ」志向が顕著らしい。つまり、備蓄を「個性的なもの」「自分がほしいもの、やりたいこと」に使えるということだろう。そうすれば、この2つの親子世代をうまい具合にくっつければいいいじゃん、という発想は容易に導きだせるわけだが、じつはこれも現実に即している。

親の世帯から子の世帯が、経済的支援を受けるというのは、ごく常態化しているということだ。大きなものでは住宅購入資金。小さなものでは、月1~2回の世帯揃っての外食。さらには、子の世帯ではプラズマなんて到底買えないけど親の家にいけばあるので、週末はDVDを見に行く、とか。

みんながうすうす気づいていたこのことを「平成拡大家族の近居」というコンセプトとして提起したのが電通(電通 消費者研究センター)の分析。数年前からコンセプト化していたものが、このたび『団塊と団塊ジュニアの家族学』(電通)にまとまった。これが納得性の高い世代ラベリングの2つめである。

同居はしないが近居。近居することによって互いいメリットを補足しあえるという新しい形の共生(共棲)ということだが、30-40代の世帯の方であれば、その親世帯の関係のなかで思い当たる方は多いかもしれない。じつは、わたしもそうだ。子どもの服を買ってもらったり、ときには旅行のオーナーになってもらったり。月に1~2度は、車で20分程度のところにある両実家に飯を食いに行く。場合によっては外食。これが、当家の特殊な事情かと思っていたらそうではないようで、マンションの近隣もそうとうな頻度で訪問しながら、実家との関係を濃密にしているようだ。

電通消費者研究センターによる「平成拡大家族」の条件は、
(1)親の世帯と近居していること
(2)30歳までに結婚し、30歳前後に第1子を出産していること
(3)親が健康で、子どもの世代よりも経済的に豊かであること
(4)共働きや出産など、親が近居して支援してくれなかったらできないかったようなことに挑戦していること


で、調査個票を「平成拡大家族」として識別した条件は
(1)子どもがひとり以上いる人
(2)実母がいる人
(3)自分の両親との距離が徒歩20分以内または電車や車で1時間以内の人
(4)自分の両親と近居していることを「良かった」と評価している人
(5)自分両親が自分の世帯よりも経済的なゆとりがあると答えた人


ということで、まあ簡単に言ってしまえば、これからは、「消費の単位をこの近居家族でみる」というパタンも必要だ、ということだが、先のプラズマディスプレイとか、住宅建築とか、高級ミニバンなどにおいては、現実的にこのターゲティングが行われていることだろう。「パラサイト“家族”」とか「スープの冷めない距離から、アイスクリームの溶けない距離へ」みたいなワーディングは、まあ面白い(後者は、いささか、どっちがどっち?という分かりにくさはあるけど)。

これまで団塊・団塊ジュニアの価値観・志向性の概観を知りたいときの書籍といえば、いつまでたっても『「団塊」家族 12のキーワードで読む団塊世代と団塊ジュニア』(読売広告社/(財)ハイライフ研究所、PHP研究所)しかなかったわけだけど、ようやく『団塊と団塊ジュニアの家族学』に代替わりですかね(※2)。さすが電通。


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(※1)では、三浦展氏自身の著書で「マーケティング戦略のねらい目はここだ」と称された『これからの10年 団塊ジュニア1400万人がコア市場になる!』(中経出版)はどうなるか?と思うが、タイトルしか読んでいないのでなんともいえない。本文では警鐘を鳴らしているのかもしれないし、うわさでは「偽団塊jr」とか「真性団塊jr」といった概念化もあるようなので、じつは今回の調査の原点なのかもしれない。さいわい手元にあったので読んでみよっと。
(※2)『団塊と団塊ジュニアの家族学』は、「CFにみる家族像の変遷」といった手前勝手なコーナーもあったりするわけですが、「平成拡大家族」だけではなく「団塊世代」の価値観・志向性などもコンパクトにまとめていたりするので、全体像把握と仮説の仮説だてにはかなり有効です。


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↑たまにはマーケの材料も
↑あげとかないとね。
↓文具や本&読書はまたいつか。


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1 コメント

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三浦展氏の本はよみました。 (てつ)
2005-07-25 16:22:42
はじめまして

てつと申します。

三浦氏の『これからの10年 団塊ジュニア1400万人がコア市場になる!』は読みました。これも結構、考えさせてくれる本でした。

また、拝見しにきます。

私の『これからの10年 団塊ジュニア1400万人がコア市場になる!』の書評ページにTBさせていただきます。もし、この記事に合わないとお考えでしたら、お手数ですが、削除してください。お願いいたします。

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