考えるための道具箱

Thinking tool box

◎『THE POLICE LIVE IN JAPAN』。

2008-02-25 00:46:09 | ◎聴
[01]『THE POLICE LIVE IN JAPAN』 presented by WOWOW
[02]『ポリス インサイド・アウト』
[02]『Philharmonic or die 』くるり

ポリスのライブは当日券もあったようなので、ぎりぎりまで迷っていたけれど、結局は、いかなかった。高校生のころからずっと、どちらかというと熱狂的なファンだし、パフォーマンスもテクニックもすばらしいということはわかっているのだけれど、いくつかの理由が、なにがなんでも、といったような気を殺いだ。

ひとつは、アリーナライブということだろう。これはまったくの私見で、おそらく激烈な異論があると思われるが、あそこまで大きい会場だと、さすがのポリスといえども3ピースの限界があるよなあという見方だ。80年代にポリスが来日したときは、フェスとか中野サンプラザといったホールで、当時もライブには行かなかったけれど、たしか渋谷公会堂だかのエアチェック音源をもっていて、それを何十回と一心に聞いていたし、それ以降もきっとブートに近いと思うけれど『Live Montreal 83』といったようなCDを入手しては聞き込んだ。いずれも大きくはないホールだし、なにより録音したものを聞いているわけだからそれなりに密度が高く、ベーシックな部分ではアルバムの音を再現し、かつライヴならではのアレンジもあり、一度はライブを観て聴いてみたい、と思っていた。しかし『GHOST IN THE MACHINE』あたりで強大になりすぎたポリスのパフォーマンスは、ライブハウスやホールにおさまりきるものではなく、アリーナはおろかスタジアムにまで広がっていった。その結果、繊細さや工夫や悪戯や敵対心のようなものを受け取るのが難しくなってきたなあ、という気がしてきた。たとえば、手元にあるDVD『LIVE GHOST IN THE MACHINE』を観ているとその思いは強くなる。『Synchronicity』の少し手前なので、まだまだ、彼らの悪童さはかいまみることができるんだけれど、パフォーマンスについては、野外ステージということもあってどうも拡散的だ。起用しているホーンセクションともうまく絡めていない。

そして、同時に、これがふたつめの理由になるが、『Outlandos d'Amour 』以外のポリスの曲というのはじつはライブ向きではないんじゃないか?もしくはライブ上のうまいアレンジが難しいんじゃないか?という私見だ。私見だけれど、いくつかの例をあげてみると、まあそういう気がしないでもない、とうなずいてくれる人も多いかもしれない。“Message in a Bottle”、“Spirits in the Material World ”、“Every Little Thing She Does Is Magic”、“Don't Stand So Close to Me”、“Synchronicity II ”などは明らかにスタジオ録音の原曲のほうがのれる。そう思わないだろうか。

それにちなんで、ライブだからといって特別なアレンジを施さない、といったことが第3の理由になるかもしれない。それがいいんじゃないか、と烈火のごとく怒られそうだけれど、ライブを体感していないとはいえ、先に書いたように、ほんとうに様々な形でライブ音源を聴いたり、映像をみたりしていると、その変わり映えのなさに少し飽きてくる。しかも、彼らは、“ポリスとして”1983年以来いっさいの進化をしていない。体験しないとまったくの意味はない、ということはくれぐれも承知のうえで、それでもその新基軸への期待感のなさから「まあ別に出向かなくてもいいか」となる。

そして、最後の理由は、スティングだろう。彼はあまりにもスティングになりすぎた。偉大なスティングになりすぎた。もはやTHE POLICEのスティングではない。もちろんエース・ファイスのスティングでもない。これは以前にも書いたが、彼は基本的には「The Dream of Blue Turtles」をやりたかったわけで、もちろん、それ以降も完成度の高い音楽活動を続けているわけだが、一度飽きてしまった、音楽に戻ることはない。たとえば、「every breath you take」は、『All This Time』の「every breath you take」以外のなにものではない。

といったようなことが、ポリスのライブにこだわらなかった理由なんだけれど、べつにポリスが嫌いになったわけではないので、wowowの放送をたのしみに待つことになる。

そしてオープニング。「Message In A Bottle」のイントロが流れ出したとたん、いやもっというとスチュワートが銅鑼をぶったたいた瞬間に、これまで書いてきたような御託はいっさい吹き飛ぶ。「Synchronicity II」に続き、それが、たとえ明らかにスタジオ音源のほうがよいとわかっているとしても、ああやっぱり行けばよかった、と嘆くことになる。「Voices Inside My Head」は、明らかにあのころのポリスだし、スティング風アレンジの「When The World Is Running Down」も大いに許せる。しかし、いっぽうで、聴きこみすぎて新鮮さのない「Don't Stand So Close To Me」や、明らかに音の薄い「Every Little Thing She Does Is Magic」などのくだりでは、うーん、やはり映像でじゅうぶんかなという弛緩を起こしてしまう。起こしてしまうが、そんなのはほんのつかの間の錯覚にすぎない。「Invisible Sun」「Can't Stand Losing You/Reggatta De Blanc」「Roxanne」なんかが続くと、一切の弛緩が無に帰す。やっぱり、ポリスは凄い、ライブもすばらしい、と。残念ながら、再アンコールの「Next to you」が放送ではカットされてしまったが、もしそこまで流れていたら、慙愧に耐えられず立ち直れなかっただろう。しかし、ほんとうにおしい冥土の土産を逸した。

01. Message In A Bottle
02. Synchronicity II
03. Walking On The Moon
04. Voices Inside My Head / When The World Is Running Down
05. Don't Stand So Close To Me
06. Driven To Tears
07. Hole In My Life
08. Every Little Thing She Does Is Magic
09. Wrapped Around Your Finger
10. De Do Do Do, De Da Da Da
11. Invisible Sun
12. Can't Stand Losing You/Reggatta De Blanc
13. Roxanne
(Encore 1)
14. King Of Pain
15. So Lonely
16. Every Breath You Take
(再アンコールの“Next To You”は放映せず)

おしむらくは、海外のセットリストより曲がずいぶん少なかったということだろうか。
日本で演らなかった"Spirits in the Material World"、"Truth Hits Everybody"、"Murder by Numbers"なんてのはぜひ聴きたい曲だし、ほんとうのところは、以下の個人ベストにある★のような曲のパフォーマンスが聴きたいところだけれど。

★Fallout ●Next To You ●Can't Stand Losing You ★Masoko Tanga ●Message In A Bottle ●Regatta De Blanc ★It's Alright For You●Bring On The Night★No Time This Time ●Canary In A Coalmine ★Behind My Camel ★Man In A Suitcase ●Shadows In The Rain ★The Other Way Of Stopping ●Spirits In The Material World ●Every Little Thing She Does Is Magic ●Invisible Sun ★ΩMegaman ★Secret Journey ★Darkness ●Synchronicity II ●King Of Pain ●Tea In The Sahara ●Murder By Numbers ●I Burn For You

ということで長くなってしまったので、『ポリス インサイト・アウト』と同じライブのくるりの『Philharmonic or die』(なんちゅう題名や)については、また別の機会に。もっと正確に言うとふたつの「ANARCHY IN THE MUSIK」については、また別の機会に。

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