考えるための道具箱

Thinking tool box

さて、どうでしょ、青木淳悟。

2005-02-25 00:05:24 | ◎読
たとえ『野ブタを、プロデュース。』が話題になったとしても、ふつうは、新人作家の第一作単行本を買うというのは、めったにないんだけれどもねえ。
漏れ聞く噂にまけて、青木淳悟の『四十日と四十夜のメルヘン』(新潮社)に手を出してしまいましたよ。もちろんいまなら、<土踊り>の『白の咆哮』(朝倉祐弥、集英社)と迷うわけなんだけど(※)、表層的な情報に負けて、青木を選びました。『四十日と…』に所収されている「クレーターほとりで」と『白の咆哮』は、目利きの玄人筋からは芥川賞候補か?ともいわれていたこともあるし、ストーリーラインを読む限りでは、創意工夫がありそうなので、いちおう気にしていたわけです。

ぱらぱらめくる限りは、なかなかに「形式」的なところもありそうで、久しぶりに読む前から読むのが愉しそうな物語かなあとは思っています。

で、わたしが負けた表層的な情報というのは、保坂和志の「ピンチョンが現れた!」という新潮新人賞選評か、といえばそうだけど、それだけではなく、島田雅彦の「日本語を使ってこんな芸も可能なのだという驚き」といった時評だけでもなく、物語の冒頭に掲げられたエピグラフです。

「必要なことは、日付を絶対に忘れずに記入しておくことだ。」
(野口悠紀雄『「超」整理法』)

おい。でしょう。なんだろ、この愉しい悪ふざけ。人を惑わせる巧い、書き出し。

今日現在、ちょっとまとまった評が発見できないのでなんともいえない。もちろん『四十日と…』は2003年の作品だし、「クレーター…」も、いち押しの人がたくさんいたので真剣に探せばごそごそ出てきそうだが、そんなことに時間を費やしているよりも、まず読みたいと思わせる程度には、見た目「テキスト」がうまく踊っている感じがする。少しだけ、冒頭を引いておきます。

「あのいかがわしいチラシがポストにたまっている。枚数は把握していない。たいていは名刺大のぴらぴらした紙にカラープリントが施されたしろもので、それを集めるのはどこか蝶の採集に似ているところがある、なんて思った日から集めはじめた。」(「四十日と四十夜のメルヘン」)

若いのにがんばってるよね。近々、書評しますよ。



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(※)ついでに、高橋源一郎の『読むそばから忘れていっても 1983-2004 マンガ、ゲーム、ときどき小説』(平凡社)も、迷ったけど、いかんせん話が古すぎる。例によって、しりあがり寿との対談とか、吉田まゆみベタ褒めとか(ベタではないか…)、「幻の電脳小説」単行本発収録とか、気にはなるんですけどね。いかんせん話が古すぎるよ。


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↑最短?明日からまた長くしますよ。
↓たぶん青木は紹介されてないと思うけど、
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