そのころ、世に数まへられぬ古教授ありけり。

この翁 行方定めず ふらふらと 右へ左へ 往きつ戻りつ

6月17日(火)東京出雲学生会

2014年06月17日 | 公開

  近所の八百屋の若旦那をはじめ、家を出てからすれ違う人のことごとくから、先生お疲れですね…だの、今日は覇気がありませんね…だの、声を掛けられ続けたが、よれよれのジャケットを着たせいかも知れない。こう暑くては、私のような太っちょにはやりきれないが、そうなると猛烈に、冷やかけのすだち蕎麦をりんだもぢりたくなった。

  上野駅からメトロに乗って銀座で降り、ホーム後ろの方の階段から地上に出て歩くことしばし、銀座タワーのビル近くの「木挽町 湯津上屋」へたどり着く。開店3分前だったが、すでに待ち合い?には男女2人連れの先客が腰を掛けていらっしゃった。このお店は茶室みたいな風情で、外の待ち合い?席には煙草盆まで置いてある。

  ご主人が暖簾を掛けて開店。あれッ、黒縁の丸眼鏡を掛けておいでだ。ますます昭和レトロっぽい店になってきたぞ。冷やかけすだちをお願いして、お手洗いを使っている間に、カウンター席の並びに若いカップル?が座ってビールや卵焼きを注文していた。おやおや、この歳で昼から蕎麦前かよと、うらやましく思う。

  「湯津上屋」は最も好きな店の一つで、ご主人の動作がとても美しいのだ。まるでお点前を拝見しているみたいである。おそらく「茶」を意識しておられるのだと思う。

  さて、冷やかけのすだち蕎麦を供するお店は数々あれど、私の知る限り、こちらのものが断トツの最高である。すだちは極めて薄く切られる。種も丁寧に除かれる。冷やした汁を張って、すだち汁も絞り入れてから、薄切りのすだちがトッピングされる。まずその美しさ。「湯津上屋」の器は清浄な白色物ばかりだが、それによく映えて、凛とした一品となる。

  薄切りのすだちはもちろん、蕎麦と絡めて啜る。この啜り加減は、実に喫茶と等しく、その音で蕎麦食いかどうかは識別できる。汁も一滴残らず啜い切って、ごちそうさま。

  蕎麦屋に長居は無用である。ご主人独りできりもりされているので、邪魔にならぬよう身支度をし、阿吽の呼吸?で支払いを済ませる。まことに気のおけるお店だ。ああ、今日もそれなりの「客ぶり」を、演じることができたわい。

  さて、道すがら青森の物産ショップで菓子を買い、社会人向け講座へ。本日は春学期の講座の最終回なのだが、夏学期の初回が高校の終業式日と重なり調整をしていただいた。その礼に330円の菓子を差し上げた次第。

  社会人向け講座は時間ピッタリ、しかもシラバスに寸分違わず話を進めなければならない。その辺は一応、ご満足いただけたかなと思う。

  終わったのが14:30で、東京出雲学生会の受付開始17:30まで、さてどうやって時間を潰すか。とまれ東京駅まで歩き、八重洲から丸ノ内に抜けてオアゾの丸善で本を買う。本屋に入れば1時間くらいはすぐに経つ。それでもまだ小1時間あったので、KITTEの1階でビールを飲んだ。ウェイトレスさんが綺麗な方で、眼福であった。よい時間となったので、東商ビルへ。

  東京出雲学生会の第553回例会である。創立131年目という、たいへん歴史の古い会なのだが、私は幹事の末席を汚している。現役学生の確保が課題で、今回もやっと、間際になって学部生2名、大学院生3名が参加してくれることになり、胸を撫で下ろす。

  前半の講演は結構長かったが。大学教授は放っておくと、自動的に90分喋るようにできているから、仕方が無い。出席者全員が近況を語る。私は同期が松江北高の校長と事務長になったことと、実父の実家の神社に私が起草した記念碑が建ったことをご報告した。

  会場の東商ビルも、再開発、建て直しなのだそうで、皇居を望むこの眺めも見納めとあいなる。

  お開きの後、学生の参加者を誘って二次会へ。有楽町―東京駅間のガード下の、偶々入れる店へ入ること例のごとし。梅ハイを飲み始めたところ、いつのまにか追随する人が…。シュワシュワするものが飲みたい季節である。