FDだ、アクティヴ・ラーニングだと、かしがましく急き立てられる昨今、そりゃ、おいらの如き老教授も、授業を弛みなく改善することにやぶさかではない。今まで、アプリオリに、「わかってるでしょ」の前提でテクストの解読作業に入ってきたが、どうも今日びの学生諸君、そういうことでは通用しないというか、そもそも「わかって」いないのでは…ということが痛感せらるるようになって、数年前から、自分がやってきたことは全て間違いだったのではないか、と思うにいたった。
そこで今般の朝いち演習では、読解に必要なDBやらツールを紹介する前に、江戸時代頃のお公家さんが歌を詠んでいたプロセスに従って自分自身で歌を作ってもらうところからスタートした。本日はようやく仕上がった歌を装飾短冊に揮毫させ、28首すべてを詠みあげて(大変だった!)、よいと思う作をひとり3点ずつ「入れ札」を指示した。結果、なるほど!という結果が得られたので、来週は何故その歌は高得点が得られたのかとの分析から、短歌のの生理といった、かなり本質的な問題に降りていけるような気がしてきた。東直子氏が教授に着任された大学で、私のごとき素人がおこがましい限りなるも、創作が目的ではないのだから、ゆるさせたまへ、ゆるさせたまへ。渡部泰明さん風の、もっぱらレトリックからのアプローチをいくら重ねてみても、けっきょく埒があかないと思っておりますのぢゃ。演習がおわって、受講生を一人つかまえ、「こんな授業で面白いか?」と尋ねたが、世辞にせよ「面白いですわ~」と言ってくれたのに慰められた次第。
続くふるほん講義は、教室変更をしていただいた甲斐があった。設備のよい新教室があてがわれて大満足。しかし、ppt紙芝居のためブラインドを下げようとしたが下がらない。施設担当スタッフに来ていただいたが、誰かか調整ヒモを引っ張り過ぎたためで、修理要請を出しておきますと言われ、おいおい、まあ本日は曇天なりで暗いから何とかなろうと、電気を消して紙芝居。調査に出掛ける際には、手土産は何がよいかというところを延々と喋くって呆れられたか。陽明文庫へは黒松白鷹を持参するのだぞなど、こんなことまで教えてもらえる講義はめづらしや。
さあ昼休みだが、今日は3時限の代講を頼まれており、飯も食えない。同居人はめでたく、勤務先大学の某役職を1年だけ拝命し(手当が2万円ちょい出るらしい)、その公務で講義ができないが、補講予定日も都合が悪く、私が代わりに教室へ行き、説明して師弟のDVDを見せてレビューシートを書かせることを請け負ったのであります。道理で数日来妙にお優しくあそばされ、大阪で拾った紙屑の代金も、ため込んだ学会費と一緒にぽんと出してくださるし、イタリア製のボルサリ―ノの帽子まで買ってくださるし、まあ物事には裏というものがありますな。茶道にも裏はあります。(~_~;)
50名ほどの科目で、「アホバカ分布考」のDVDを見てもらったが、皆ぎゃはぎゃは笑っておりましたわ。
やっとこさ「Cafe GOTO」へ行って、昼食代わりにタルト・タタンとコーヒーをいただく。GOTOさん、チェスの試合準備に余念がない。
18:00からK書院の研究会。それまで雑用をこなし、神楽坂へ移動、雨の中「うつわや釉」の「坪島土平追悼展」を観る。
研究会は「志満金」さんで、いつものお茶の稽古場の上だ。顔見知りの女性がお運びをなさっていた。ご主人のKさんにお菓子を持参したら、わざわざ挨拶に出て来てくださった。お運びさんには、先生もちゃんとした学者でいらっしゃるんですねとか、変なことを言われる。K書院も社長が交代したが、人文学系出版はなかなか厳しいようだ。前席が広島の角筆大家先生、左隣が前社長さんで、右には京都から総持寺附属大へ移られたK先生が遅れておいでになった。同居人の所属学部長先生もお見えで、ご挨拶する。今朝逢いましたよとかおっしゃっていた。こもごも、狭い世界である。