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灰色の虹

2011年04月06日 21時44分35秒 | 読書
灰色の虹という小説を読みました。
これからネタバレしてます。

同僚の恋人が上司に理不尽に怒られているのに
我慢できずに掴みかかったら
その日の夜に何者かにその上司が殺害され
容疑者として逮捕された主人公(江木)が
無実にも関わらず実刑判決を受けて
職場も恋人も家族も失い
その裁判を担当した刑事、検事、弁護士、判事、証人を
殺害していくというお話です。

これだけ聞くと主人公の江木がとんでもなく
悪者のように感じるかもしれませんが
どちらかというと江木に同情的で
復讐してもやむをえないんじゃないの、
っていうのが率直な感想です。

江木自身もそうですが
家族もかなり悲惨で
婚約間近のお姉さんは破談になり家族と縁を切り
父親は鬱病になって自殺、
母親だけは江木のことを最後まで信じますが
あることをしてしまい
結果的に一番の被害者になってしまいました。

特にお姉さんは元々は明るくて笑顔が絶えない人だったのに
江木の面会に来たときは
表情が暗く、人格が変わったようになってしまい
加害者家族の恐怖を感じました。
もちろん江木一家は引っ越しを余議なくされるし
移り住んだ所でも
「殺人者は消えろ」と貼り紙を貼られ
完全に崩壊してしまいます。

数十年前ならいざ知らず
現代社会でこの程度の物証で
有罪にはならないだろう、というのが正直な所ですが
それを抜かせば冤罪って本当に怖いものだと思いました。
1日中強面の刑事にずっと取り調べされたら
楽になりたくてやってなくてもやったと
白状してしまいそうです。
1人で出かけるときは
周りに自分の存在を示すようなことをしておいた方がいいと
本気で思っています。
それがダメなら訪れた先の店員さんの名前とか
容姿とか覚えておくとか

このお話で殺される刑事・検事・弁護士・判事は
職業でやっているだけで
思い込みなどそれぞれあったにせよ
それ自体が罪になるようなことでは
もちろんないんですが
不思議とあんまり同情的にはなれなかったです。

犯行時刻に江木とすれ違ったと証言した
雨宮というサラリーマンがいるのですが
この小説の中で一番嫌いなキャラクターでした。
江木は顔に大きな痣があるのですが
その痣をはっきりと見ていないのに
裁判で今さら見間違えだと言えずに
江木だったと認めてしまい
これが決め手となって有罪になってしまいます。

そしてこの証言をしたことでヒーロー気取りになり
この快感が忘れられずにブログで
このことを盛んにアピールして
結果、襲われることになるんですが
彼だけは殺されても仕方ないです。
人物像も一流大学を出て、
学生時代は海外を貧乏旅行して
大企業に就職し、郊外に一戸建てを建てているという
憎まれる要素をこれでもかと詰め込んだ所に
作者の悪意が感じられます。

また同時に思ったのが、いくら頭にきても
掴みかかったり口論したりしない方がいいということです。
このお話のようにいきなりその後に死ぬようなことは
ないでしょうが、何が起きるか分からないし
それを見ていた人は間違いなく
証言してしまうことでしょう。
それが例え無実だとしても
真犯人が捕まらない限り、
周りの人は半信半疑をぬぐいされないし
会社にも居ずらくなりそうです。

逆に恨みを買って殺されることもあるかもしれないし
それは極端にしても些細な嫌がらせ(いたずら電話など)を
受ける可能性もあるから
結果的に腹が立っても内におさめて
それで家に帰って愚痴日記を書いて発散させた方が
得をすることになるんでしょうね。


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