音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 (ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト)

2009-08-09 | クラシック (協奏曲)


私はヴァイオリンという弦楽器(というか、所謂この仲間である、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという弓を使った弦楽器)を演奏に使った経験がないので良く分からないのだが、ヴァイオリンという楽器はなぜか、いつもオーケストラでは花形的存在である。例えばピアノ協奏曲というのは、ビアノという楽器の演奏と指揮を兼ねて弾いたりすることは既にモーツァルトの時代からやっていた。だが、ヴァイオリニストというのは、例えばコンサート・マスターがそうであるように、指揮者と同格かそれ以上の存在である。勿論、ピアニストだってそういうことも多分にあるが、ビアノの場合、ビアノ協奏曲のように最初からその為のシテュエーションが整っているから目立つようなものの、そうでなくてもヴァイオリンはやはり花形である。だが、例えばチェロの方が音域も広く、個人的に楽器としても演奏としても興味があるのだが。それで、そんなことを考えているのは、なぜ、協奏曲の中でもヴァイオリンが多く、また、名曲といわれているものもヴァイオリンは、チェロやクラリネットなどその他の楽器(ピアノを除く)の協奏曲の名曲を集めたそれよりも圧倒的に曲数が多い筈だ。また、その名曲というのも、ピアノ協奏曲の様に人によって名曲とされる基準が異なるのと違って、やはり「四大ヴァイオリン協奏曲」なのである。

ところで当然のことながら、モーツァルトもヴァイオリン協奏曲を書いている。以前は全部で8曲書いていたといわれていたが、その後、6番と、ニ長調の曲が偽作とされ、7番はどう考えてもモーツァルトの作品とは言い難いということから全部で5曲とされている。その中でもこの3番と5番は間違いなくモーツァルトの作品である。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲というのはどれも、大作では無いが(というか、そのこと自体は後世の音楽家がこのジャンルを研究しつくした成果としての結果論の過ぎないが・・・)、どれもモーツァルトらしい作品であるし、なによりも、ハイドンがこのジャンルには殆ど貢献していないことから、ヴィヴァルディやバッハのヴァイオリン協奏曲はリトルネロ形式なので、所謂、ソナタ形式の協奏曲を世の中に紹介したのはモーツァルトである。つまりピアノ協奏曲と同じ様に、このジャンルでも先駆者なのである。ピアノで23曲も協奏曲を書いているのに比べてヴァイオリンでは5曲というように、如何にこの当時、ピアノという楽器がセンセーショナルであったが分かる。また同時にモーツァルトの恐るべきところは、この5曲の協奏曲を1775年の一年間ですべて完成させてしまっているという点である。更に面白いのが、ヴァイオリン・ソナタとの関係で、1番から16番は1768年に書き終えているのだが、その後再び書き出すのは1778年の24番ハ長調(17番から23番はモーツァルトの作品ではない)からで、1788年(43番)、三大交響曲を作曲した年まで作り続けている。いつも思うが、この音楽に対する飽くなき探究心には脱帽どころ頭が幾つあっても足りない。この曲は、第1楽章も、またロンドのお手本のような第3楽章もとても良い旋律だが、それよりもなによりも、素晴らしいアダージョである第2楽章に尽きる。そして、第1番、第2番から曲構成が飛躍的な進化を遂げているのである。

モーツァルトは5曲のヴァイオリン協奏曲を書き終えると、その後は、色々に楽器の独奏協奏曲を書き出した。フルートとハープ、フルート(2曲)、オーボエ、ホルン(4曲)、クラリネット、フルートと管弦楽(ファゴット協奏曲はヴァイオリン以前の作品、また楽譜が残っていないがトランペットでも書いているらしい)である。まさに彼は協奏曲の手引きを作って、それらを極めることに関しては後輩に委ねたのであろう。いずれにしてもこの曲を聴いていて思うのは、どの分野においても後世への遺産を沢山残した点で、限りない可能性の持ち主だったのである。


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2 コメント

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こんにちは (Seko-M)
2009-08-13 13:11:34
確かに四大協奏曲の様な重たいコンチェルトも良いですが、私はモーツァルトのヴァイオリンコンチェルトは分かりやすくて良いと思います。ご指摘のように、3,4,5番は、大変洗練されています。

ベートーヴェンやチャイコもそれはそれは良くできていると思いますし、メンデルスゾーンも親しみやすい、ブラームスは完成の域に達していると思いますが、それはそれで、モーツァルトとはこの楽器のコンチェルトの考え方が彼らとは違うのでしょうね。

ブルッフのコンチェルトはどう思われますか?

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ちょっとした指摘 (Bunchou)
2009-08-23 22:07:57
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲は1773年に1番が、残りの4曲が1775年に作曲されたというのが現在の状況であること、指摘させていただきます。

彼の協奏曲の中で、3~5番の3曲はソロ楽器とオーケストラの関係性の点で注目すべきものを持っています。それは、その後の彼のウィーン時代のクラヴィーア協奏曲に繋がっていくものですね。
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