音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ピアノ協奏曲ト短調 (モーリス・ラヴェル)

2010-04-06 | クラシック (協奏曲)


「のだめカンタービレ」のアニメ編(原作に忠実に沿っている)でも演奏され、映画版では後編に出てくると思われるが、この作品を取り扱ってくれたことは大変斬新な試みであると思う。確かに彼女が千秋先輩との共演を自ら考えるきっかけになる旋律というのは分からないでもない。だが、孫ルイと千秋先輩が先に共演(おっと、ドラマと映画初見の方にはネタバレになってしまう、すみません・・・)してしまい、ルイの新境地ということで話題になるのであるが、待てよ、どちらかというと孫ルイは、プロコフィエフのピアノコンチェルト第3番あたりの方がイメージに合っていると思わないか? この作者のクラシック度は尊敬に値するが、この部分は少し不満かな。確かに、多くの曲を紹介することも大事だが、ストーリー的には致し方なかったのだと思う。

モーリス・ラヴェルというと、やはり「ボレロ」なのだろうか(前出のだめの映画前編での扱われ方は抱腹絶倒の極みだった)。この楽曲の認知度は世界的にも可なりポピュラーなのだと思う。しかし、このボレロは何故、そんなに有名なのか? 1981年映画「愛と悲しみのボレロ」でもこの曲は扱われたが、その後、1984年、サラエボ五輪のフィギュアスケートにおいて、ジェーン・トービルとクリストファー・ディーンのペアが、名曲「ボレロ」にのせて演技したが、その後、サラエボの悲劇が始まり、いつのまにかこの楽曲は伝説となったのであろう。この詳細に関しては、いずれ「ボレロ」の記事で書くとして、私は個人的にこのコンチェルトは大好きだ。第1楽章は鞭の音(グロッケンシュピールを用いる)で始まるが、ピアノに対して、フルートとホルンの協奏から始まり、コミカルでもあり、また終始ユーモラスな旋律が続いているのが特徴である。第2楽章では数々の管楽器パートが曲を引っ張り、第3楽章では、更に打楽器も前面に出てきて、軽快にテンポになっている。当時、新興で最新流行のジャズを取り入れた音楽という言い方をよくされるが、私にはあまりジャズのテイストは感じない。寧ろ、協奏曲の王道を最新のクラシック・テイストで継承したという印象が強く、実は、ラヴェル本人も、「モーツァルトやサン=サーンスと同じような美意識のもとに書かれた、あらゆる意味で協奏曲らしい協奏曲」と語っている。また、この曲はもうひとつの彼自身のピアノコンチェルトである「左手のためのピアノ協奏曲」とよく比較されるが、それに関しては同曲の鑑賞文で書く。ラヴェルという音楽家は、民族性をとても大事にした人である。また、本人が述べているように「数々の音楽家から影響を受けた」、「エドヴァルド・グリーグの影響を受けてない音符を書いたことがありません」等と述べているが、私は個人的には余りフランスの音楽家というのは高く評価していない。というか、パリは当時から芸術の都であり、勿論、それ以外の芸術には偉大なアーティストを沢山輩出しているが、こと、音楽に関しては、音楽資質が高くない国民性だと思っている。フランス最高の音楽家はドビュッシーだと思っているが、ラヴェルはドビュッシーより少し後の人で、印象派に分類されていながら、ドビュッシーと比べると古典的な形式が多く、そういう意味では音楽史上、面白い音楽家だと思う。

今年はショパンやシューマンの生誕200年で、ここのところ、ロマン派音楽家の団塊世代がメモリアルイヤーを迎えるために、暫くはこの時代の音楽がクラシックの主流となるだろうが、ラヴェル前後も素晴らしい音楽家や新しい感覚のクラシック楽曲が生まれいて、是非聴いて欲しいと思う。その入門編としては大変興味の持てる1曲だと、個人的には思っているし、支持したい。


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1 コメント

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のだめ・・・ (Tiffa)
2010-04-12 20:10:43
いよいよのだめの映画版後編が封切られましたね。もう観にいかれました?

この楽曲、確かにのだめっぽいのは冒頭部分ですね。私も、プロコフィエフのコンチェルトの方がのだめの演奏には合っていると思いました。

取りあえず映画を観てみたいですね。

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