音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ファゴット協奏曲変ロ長調 (ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト)

2010-09-29 | クラシック (協奏曲)


私はこのブログで随分色々勝手な見解、特に音楽理論に全く基づかない勝手な意見を書いているが、こと、このモーツァルトに関しては本当に色々といい加減なことを書いていると思う。だが、この偉大な音楽家に関していえば、彼の一生涯を通して説明がつかないことが多すぎるというのがその原因で、それをきちんと人間の一生として説明が着くように沢山のプロットを整理していくとどうしてもそうなってしまう、そのまとめを記しているに過ぎないのである。

この「ファゴット協奏曲」に関して書いていれば、実は、その私のモーツァルト論を最も表現してくれている楽曲だという言い方もできるのである。持論として、モーツァルトは「音が多い作曲家」ではなく「楽器の可能性を引きだした」作曲家であるということだ。そうでなければ、このファゴットで協奏曲を書くなんて発想は出てこないのである。ファゴットという楽器はオーボエと同様、上下の組み合わされた2枚のリードによって音を出す、ダブルリード方式の木管楽器である。従って音を出すのがとても大変である。またファゴットはその音程から低音部を担当する。そもそもはバスーンと言われるが、楽器の演奏時に両手の指ですべての音孔を押さえるために、管を折り曲げてある。その様が薪の束(fagotto)のようであるところからイタリア語ではファゴットと名付けられ、それが浸透した。木管楽器の低音部は貴重であるために、オケでは必ずといって良いほど用いられる楽器であるが、メインになることは殆どない。ファゴットのために書かれた曲もこのモーツァルトのコンチェルト以外にも数えるほどしかない。モーツァルトはこの曲以外に、「ファゴットとチェロのためのソナタ」という短い曲を書いている。察するにモーツァルトはこの低音木管楽器に主役をとらせることでスローで大人しいコンチェルトを作ろうとしたのだと思う。それが証拠に彼はこの曲を含めて3曲のファゴットのためのコンチェルトを作曲していると記録されている。しかし、現存しているのはこの1曲だけであるということは、スローなコンチェルトの難しさを物語っているし、もしかしたら没になった2曲の構想は、別のコンツェルト、特に彼の場合、ピアノコンチェルトのいずれかに派生していると考えられる。楽器論になってしまうが、それだけ、モーツァルトとピアノ楽器の進化の関係は画期的なものであったに違いないと思う。彼はピアノ協奏曲に没頭してからは、名曲クラリネット協奏曲イ長調以外に、他の楽器でのコンチェルトを自重してしまっている。そう、モーツァルトの時代に進化したピアノ楽器があれば、幾ら楽器好きの彼でも、他の楽器を試す必要が無かったのである。ある意味このファゴット曲はとてもタイミングの良い時代に作られた。モーツァルトはこの後、ヴァイオリン楽器を極めて、さらにピアノに移っていくのだから。第1楽章は、他の協奏曲と同じように序奏から歌ってくるかなり印象的な曲調であるが、やはりファゴットだけあって表情のメリハリは少ないが、細かい音で繋いでいるところなど、オーボエ協奏曲などとはまた違ったアプローチはさすがにモーツァルトである。

後世になって開発されたメロトロンを一番欲しかったのはモーツァルトではないだろうか。だが、メロトロンやその後のシンセなどが出てしまったら、恐らくモーツァルトは音楽を作らず舞踏会やパーティで遊んでばかりいただろう。つまりは数々の名曲も出てこないという訳なのだ。


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