音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

レッツ・ダンス (デヴィッド・ボウイ/1983年)

2010-11-22 | ロック (イギリス)


なぜ、デヴィッド・ボウイ程の経歴があるミュージシャンの最初の作品レビューがこれになんだ! と自分でも思ってしまうほどであるが、これも所謂、私の10代の頃に根強く蔓延っていた、「聴かず嫌い」の一面である。当時私が「聴かず嫌い」だった他の大物アーティストというと、エルヴィス・プレスリー、ボブ・ディラン、それから殆どのソウルミュージシャン、殆どのカントリー&ウエスタン、さらにR&Bといったところがその代表であり、デビット・ボウイも聴かず嫌いの大物ミュージシャンであった。

ただ一方で彼はイギリスのミュージシャンながらアメリカのヒットチャートで活躍していた。なので、1970年代中盤以降のアルバムは続けて聴いている。彼の声質は実は大好きで、ニューウェーブ・ロックが流行ったときも、好きなミュージシャンに共通していることはボウイに声が似ているということだったと思う。私は声優さんとかは余り詳しくないのだが、結構「声フェチ」で、男性だったら低音よりも、ボウイの様にエキゾティックな声が、女性では逆にタカラヅカの男役の様な声には妙に反応してしまう。そんなわけだから、当時、FENのビルボード番組や、全米トップ40も、またエフエム番組も「声」だけしか聴かなかったからボウイを徐々に認知したのである。音楽界で1・2を争う美貌の持ち主(無論、顔も好きだ。私は美しいものが好きなので・・・)に対して「声が良い」という言い草もどうかと思うが。というか、多分、1970年代前半の彼の独特な音楽指向と妙なアルバムやステージメイクが嫌いだったのかもしれない。だからMTVが無かった時代には声と歌で判断するしかないので、この辺りはボウイを見直す良い機会になったことは事実である。このアルバムはタイトル通り、ボウイにしては「遅ればせながら・・・」のダンスミュージックが収録されているが、その辺りはボウイなので特に流行に左右された作品づくりではない。しかも、この作品にはナイル・ロジャーズがプロデュースとして参加しているのも大きい。この時代、ソウルのテイストを含んだ作品というのが、例えば、プロンディやマドンナが成功していることも話題を呼んで、同名タイトルのシングルは、ボウイに取って初の英米第1位(これも驚きだ。名曲「フェイム」はイギリスで1位になっていないということだ)に輝いた。また、もうひとつ特筆すべきが、今は亡きスティーヴィー・レイ・ヴォーンが全面的に参加していることである。当時彼は、ジャクソン・ブラウンなど名だたるミュージシャンとの共演が始まった頃ではあるが、殆ど無名に近い状態だったから、この作品での経験は大きく、同時に音楽ファンからも注目された。ボウイという60年代から活躍をしている稀代なミュージシャンと、ナイル・ロジャーズという当代一のプロデューサー、それにこれから注目される未来のギタリストの3人が集ったこの作品は、新しいボウイサウンドを演出しただけでなく、ボウイに取って商業的に最も成功した作品となったのである。

だが、やはり、ボウイの作品群の中では少し異質である。いや、ボウイ自身が音楽界でも突飛な存在なのかもしれないが、多分殆どのボウイファンに取ってもこのアルバムは彼のベストではないことは確かであるし、そうでなかったとしても、私には一音楽ファンとしてボウイの作品だったら他に聴いて欲しいものが沢山あるということを最後に付記しておく。(別の機会にレビューします)


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