音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

交響詩ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら (リヒャルト・シュトラウス)

2010-01-27 | クラシック (小品・その他)

「のだめカンタービレ」の映画版前編が公開されていて、映画好きの私は残念ながらまだ鑑賞していないので映画ブログにも記事をあげていないが、実はこのドラマを特別編も含めて鑑賞した中で、兎に角、この漫画の作者のクラシック度に驚いたのが、モーツァルトの「オーボエ協奏曲」と、このR.シュトラウスのこの交響詩を扱っていことであった。ブライチなんかは別にクラシック素人でも知っていることだから驚かない(というよりは、逆にブラームスの交響曲を学生レベルの楽団で演奏しようと思うのかが疑問であった、これはベト7とは少しレベルが違うので・・・)のだが、特に、この楽曲を千秋のコンテストでプロの演奏家に演奏させるというシテュエーションは見事だと感心した。そう、ホルンの演奏家は一番「小さく吹け」ということを嫌うのだが、それをコンテストの若造、しかも日本人が指令するのは、原作にもあるように「オレがホルンを吹いてやっているだけ有難いと思え!」って、実に見事な設定と展開である。この箇所には唸ってしまった。

リヒャルト・シュトラウスという音楽家で思い出すのは、やはり交響詩とオペラの作曲家であるということで、特に交響詩は名曲揃いである。その中でもこの楽曲は確かに旋律的には一度聴いたら忘れないほどのどこかに懐かしさと、また、楽曲の楽しさというものを十二分に感じることができるのである。だが、全曲を聴かせる時間がドラマ内では足りなく、ましてや漫画という「音」で表現できない媒体の中で、この音楽家を如何に印象づけるかということに於いてこの楽器を使ったところが実に素晴らしく、同時にそれは、この漫画作者がR.シュトラウスをとても好きだということも同時に分かってしまうのである。後期ロマン派音楽家とい言えば、どうしてもその代表はブラームスであり、彼と同期となると、正統派ではドヴォルザーク、斬新派ではマーラーという巨匠が居る中で、クラシック初心者には中々認知され辛い存在である。だからこそ、この楽曲を使うことでこの音楽家を印象付け、しかもドラマの中では、千秋真一初めての大ピンチに直面した楽曲というように位置づけしたところで、この曲と、並びにこの音楽家の名前が広くクラシック初心者に知れ渡ったことは大変喜ばしいことである。物語でいえば「むかしむかしあるところに・・・」という部分を短い前奏で片付け、次にこのホルンがティル・オイレンシュピーゲルの最初のテーマを奏でる。この物語は最後は死刑を宣告されるという大変怖い話でもあるが、しかし、このホルンのテーマのお陰で、主人公は死んでその悪戯は永遠に語り継がれるよという余韻を残している。この辺りは実にシュトラウスの研ぎ澄まされた感性とその高い音楽性を評価できる部分である。

特に、シュトラウスの父はホルン奏者であった。だから、前述に長々と書いた千秋真一のこの楽曲でのホルンの拘りは余計に分かるのであって、そこまでも知り尽くしたこのクラシック漫画の作者は、この国にクラシック音楽を紹介していく中で貴重な逸材であると感動したのである。


こちらから試聴できます。



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