音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ザ・スミス (ザ・スミス/1984年)

2013-06-18 | ロック (イギリス)


スミスが英国ロック・ファンの中において、共通して語られていることに「1枚も駄作を出さなかったアーティスト」という認識がある。無論、筆者もそう思う。ただ、筆者が残念だったと思うのはスミスの出た時代であった。この作品は彼らのファースト・アルバムとして1984年に発表になっているが、この時代、ニューウェーヴは収束していた。そして次の大きなムーヴメントであるオルタナティヴが発生するまでの間、ロックは絶滅寸前のところを辛うじて生き残っていた。そんな時代にスミスはオリジナル・アルバム4枚を出した。とても上質な作品だ。だからこそ、このバンドがあと5~6年早かったら、ポリスに並ぶヒット・メーカーになっていたかもしれないし、逆にあと5~6年遅かったら、R.E.Mに並ぶ、ロック・ミュージシャンの鑑になっていたであろう。かくいう筆者も、この時代にはポップ音楽から遠ざかりつつある年で、だから皮肉なもので、スミスに関しては最初聴いたのはセカンド・アルバムだった。なぜそうだったのは、はっきり覚えていないが、多分音楽仲間の間で、このファーストの評価が滅茶苦茶に高かったので、慌ててレコード(いや、初期のCDだった、多分)を買いに行ったので間違えてセカンドの「ミート・イズ・マーダー」を買ってしまったのだと思う。そう、セカンドのジャケットは結構強烈な印象だったから。

間違いに気づいてすぐ手に入れたこの作品だったが、やはり、このモリッシーのヴォーカルと、ジョニー・マーのギター旋律には完全に填った。セカンドもだが、ファーストはそれ以上だったのを覚えている。もし好きなデビューアルバムを3枚上げろと言われたら、筆者はジャム「イン・ザ・シティ」、ポリスの「アウトランドス・ダムール」と共にこの作品を選ぶかもしれない。しかもこの作品(に限らず、スミスは全部?)を最近よく聴くのであるが、やっぱり英国はギターロックなんだなって痛感するし、モリッシーの感傷的で人間性溢れる詩には共感する部分が多いし、それをジョニー・マーのギターサウンドはまるで饒舌に語っているように包みこんでいる。スミスというバンドはこのアルバムを出す前(いや、その後も、というかもしかしたら最後まで)基本、シングル・アーティストという色合いが強い。現にこの作品からもシングルカットされたのは、"What Difference Does It Make?"1曲のみである。だから言い換えれば、曲作りがとっても丁寧であるのと、同時に色々な要素、特にこの国の場合は世相を含んでいる。その辺がよく彼らが形容される「労働者階級の代表」、「サッチャー時代の負の産物」、或いは「社会的弱者の代弁者」等は、どれも彼らの音楽的側面よりも、その生き方に注目したものがほとんどで、商業的な発想であるが、筆者が思うにはもっと純粋で、例えば、モリッシーとジョニーはヴォーカルとギターの二重奏で、その中身は前述したギターサウンドであるが、この変則二重奏で得た新しいポップ音楽への提言は大きくて、これが明確に21世紀の新しいポップ・ムーヴメントに直結していると思う。

2001年、ストロークスを聴いたときに、何故か、ビートルズでもオアシスでもない、このスミスを思い出した。そのときは何故か分からなかったが、後々、そうだ、ストロークスのツイン・ギターって、モリッシーとジョニーの二重奏なんだって気がついた。無論、ストロークスが真似をしたのではない。だが、このギターロックの基本的な旋律って、国や時代が変わってもきちんと継承されるんだって、妙に嬉しかった記憶を呼び起こした。


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