音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ベガーズ・バンケット (ローリング・ストーンズ/1968年)

2012-01-04 | ロック (イギリス)


いきなりこんなことを言って恐縮だが、実は私がローリング・ストーンズの作品の中で最も高く評価している作品は、この「ベガーズ・バンケット」である。そしてさらに言うと、このアルバムが60年代に発売された作品の中で最も優れていると思う。そして私自身も相当好きなアルバムである(注:最も好きな作品と、高い評価は違う。偶々同じ作品もあるが・・・)。それには色々な理由がある。その理由を全部書いていると馬鹿みたいに長い文章になるので、幾つか要点だけ記してみたい。

この作品は1868年に発売された。「フラワーズ」のレビューで書いたように、前年1967年はストーンズにとっては残念な年だった。ストーンズはあのサイケデリック・イヤーに、「サタニック・マジェスティーズ」というストーンズ流サイケで、さらに残念な作品を出してしまった。これには触れたくないのでパスした。しかし音楽ファンは皆、ストーンズもサイケに走るんではないかという心配をした。簡単な物言いでいえば「サージェント・ペパーズ~」という60年代はおろかロックを代表する作品はビートルズが出したから価値があったのであって、それは、ストーンズだろうが、ディランだろうが、全く同じ内容の作品を出してもダメだった訳だ。しかしディランは流石にそんなことはしなかった。ストーンズはやってしまったのだが、そこには沢山の理由があった。ストーンズというバンドのお家事情である。そして多くのファンはストーンズがサイケに走ってしまうという脅威を感じた。そこに発売されたのがシングル「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」だったのだが、これが全英で1位、全米で3位も大ヒットになった後に本作品の発表となった。なにかに似てないか。そう、「サティスファクション」の英米共にNo.1に乗じて大ヒットした「アウト・オブ・アワ・ヘッズ」のパターン。ストーンズはこの苦境にあって同じ賭けに出たのであったが、これが大成功だったのだが、実はこれが単なる大ヒットではなく、「伝説」になってしまったのは、悲しいかな、その後のブライアン・ジョーンズの変死にあった。この作品では確かにブライアンの存在感は殆どない。ブライアンは白人に黒人にブルースを聴かせるバンドとしてストーンズを結成した。しかし、その崇高な音楽ポリシーは商業音楽的には全くナンセンスだったが、ミックとキースの類稀なオリジナル性は高く評価され、だが一方で楽器オタクなブライアンも、音を広げるという意味ではバンドだけでなく、ファンや音楽関係者にも注目されたが、ドラッグ漬けになったブライアンには残念ながらもうその価値すら残っていなかった。だがこの作品でもシタールやスライド・ギターを演奏していてその音楽性は興味深い。だから、当然、ストーンズはここが頂点であり、ここで伝説になった。ただ、彼らの凄いところは、この後発売するアルバムの殆どすべてで、この作品で到達したクオリティを少しも落としていないということだ。ただ、ストーンズのギターは、ブライアンとキースなのであり、それが伝説となったため、どんなに凄い作品を作っても、ここは越えられないのであった。この作品、全10曲、本当に息を付く間もないくらい音楽が発する衝動と、それによる感動を与え続けてくれるような作品は、未だ出会った事がない。

冒頭に書いたが、60年代で一番良い作品ということは、もしかして私のポップ音楽の中では一番高く評価している作品なのかもしれない。ローリング・ストーン誌ではないが、そろそろそういう「My Best100」くらいは纏めておかないといけないのかなぁと思っている。勿論、そうなれば、多分、60年代後半は可也多くの作品がはいってくると思うのだが、これは多分、私にとって60年代が洋楽リスナーとしてはリアルタイムでなかったことが大きいのであり、やはり1967年がリアルだった層とは決定的に違うし、彼らの層は絶対この作品を「サージェント~」より上に選んだりしないことであろう。それが出来るのは70年代からリアルな年代の特権だとも思っている。


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