音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

サーファー・ローザ (ピクシーズ/1988年)

2013-01-07 | ロック (アメリカ)


オルタナティヴロックの中で、実はとっても気になるバンドがある。何を隠そう、それは本作品の演奏者であるピクシーズスマッシュ・パンプキンズである。だが、この二つのバンドに何か特別な共通項があるわけではない。あるとしたらアメリカ出身のバンドと、ベース担当が女性ミュージシャンというくらいであろうか。そしてこの二つのバンドは、まるで示し合わせたように、あのニルヴァーナを挟んで、前がピクシーズ、後がスマッシュ・パンプキンズの全盛期である。だが、ピクシーズの出身はボストン、一方のパンプキンズはシカゴだから、何れもニルヴァーナとの接点は薄い。だが、カート・コバーンはピクシーズに強い影響を受けたと言っているし、一時期であったがパンプキンズはニルヴァーナ後のオルタナシーンを継承する逸材と言われるほど大ヒットした。まぁ、こうやって勝手に接点を探しているのだが、その事以前に個人の琴線に触れるオトっていうものに一定の定義や法則性は見つからないのだから、自分の事であっても結構面白いものだと思う。

この作品はピクシーズのデビューアルバムであるが、1曲めから結構激しい旋律で押してくる。なんでと思いきや、エンジニアにかのスティーヴ・アルビニを迎えている。この辺りは大変納得。"Bone Machine"なんかはついつい耳に残ってしまうし、気がつくと移動中のMP3プレーヤーでも巻戻して何度も聴いたり中毒になりやすいオトである。しかし、かと思えば、"Gigantic"では、紅一点、ベースのキム・ディールがなんとも妖艶に、しかも気だるく歌っている。この人、ソロでもやってけるんじゃないかと思うくらいだし、こんな女性ヴォーカリストはちょっとアジアには存在しない(そういう人は欧米には沢山いるものではあるが・・・)。というかアジア、特に日本の音楽シーンでは絶対に受け入れられない。また、"Where Is My Mind?"はこのバンド特有のギター轟音をバックに、絶品なバラッドを奏でている。他にもアレンジが素晴らしく、なにより一つ一つのオトが臨場感満載であり、またアルバムとしての価値は2~3分間の短い曲を繋いで22曲目一杯をフルに詰め込んだのに、全く飽きる事がない内容は流石だと思う。思えば、丁度、時同じころ、かのソニック・ユース「デイドリーム・ネイション」という途轍もない名盤を発表してしまったために、当時はこちらが霞んでしまったのか、その辺はこの当時ロック音楽から距離を置いていた筆者には判断が出来ないが、いずれにしても、初期のオルタナを代表する作品であることは間違いない。

思えば、1980年代の何処かからか、音楽はその「オト」を追求するのではなく、どちらかというとその精神面を大事にする方向に走り出していた気がする。しかし、別にそれはリリックを強調したラップやヒップホップに代表される音楽だけでなく、オトに拘りを持たない、そういう意味ではこの当時はもう殆どがCDというデジタル媒体になっていたから、そんなことも起因しているのかもしれない。だが、筆者が嬉しいのはこの作品は執拗にオトだけに拘っていること、追求はしていないが、ただ只管に拘っている姿が好きなのだ。


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