音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

21 (アデル/2011年)

2012-02-22 | 女性ヴォーカル


そういえば、2000年代の作品レビューって書いたことあるんだろうかと思いながらこのレビューを書き始めたのだが、確か「キッドA」は2000年だったよな。それと、ノラ・ジョーンズのファースト、それから、アヴリルも書いた記憶があるがその程度だろうと。でも、光陰矢の如しとはこのことで、そのアヴリルのデビューから、早10年が経っているのである。彼女も可也若くして成功したが、このアデルはそれをデビュー3年でいとも容易く上回ってしまった。最早、彼女の行くところ全て、「記録づくし」であろう。それが、今年のグラミーを象徴していた。正直2011年一年を振り返ると話題性で言えば、レディー・ガガの方が上であったかもしれない。だが、2009年テイラー・スウィフト、2010年レディー・ガガと引き継いで来た女性シンガーの活躍に順ざれるのは格好の状況にあったし、さらに客観的な数字の理論で言えば、アデルは、2011年最も活躍したアーティスト「2011 Top Artists」、年間総合アルバムランキング「2011 Billboard 200 Album」、年間総合シングル曲ランキング「2011 Hot 100 song」の主要3部門全てでNo1を獲得した。で、この快挙は女性アーティストだは初めて、ホイットニーですら2冠だった。だから、今年のグラミーはとても順当であったといえる。

一方で、よくグラミーがアデルを選んだという「不思議」もつきまとった。グラミーは売上げ至上主義ではないし、商業音楽を否定する審査人も含まれる。更にいえばこのアデルの「21」という作品に関して、この芸術性をグラミーが高く評価するとは到底思えなかったからだ。この作品はよく言われるようにテーマはファースト・アルバム「19」同様「別れ」である。その素因となるものは前作がヒットして決定したツアーの途中で、彼女がこの「失恋」が原因でステージを放棄した際のマスコミのバッシングに対し、彼女はその回答を自己に向け、離別は単に精神的な荒廃だけでなく、物事を退廃に仕向けてしまう事への気づきが大きなコンセプトとなったのである。ここに彼女の内なる芸術性が向けられたことが、結果彼女を前作よりも更に大きなアーティストとして成長させた。だからこの作品は等身大の世代からも、そのちょっと上の世代を中心に支持された一方で、このファーストから持ち合わせていた類稀な音楽性はジャンルを越えて支持された。そもそもアデルはご存知の様に、2008年アメリカ合衆国大統領選挙における共和党副大統領候補者のサラ・ペイリンが出演していた「サタデー・ナイト・ライヴ」に出演し、その番組が記録的な高視聴率で全米約1400万人の視聴者の目に留まったという幸運にも遭遇して有名になっていたから、これはまさに運命だったのかも知れない。さらに言えばアデルは喉の手術をしたにも関わらず、2011年にクリスマス商戦でもダントツの1位セールスだった。2012年になって、アメリカの音楽セールスにおいても、初めて年間デジタルセールスが上回ったことが発表されると、当然音楽界は挙ってソフトの売上げに貢献するアーティストを高く評価する、というタイミングにも恵まれた、そんなアーティストがアデルなのであった。

勿論、成功者に幸運はつきものである。音楽的才能なんて尺度がはっきりしないもの、つまりは「芸術点」というのは所詮、紙一重な差でしかないし、事実は無いのかもしれない。しかし、それは音楽に関わらず、幸運が目の前に降りてくるかどうかは、掴むか掴めないかよりも、当たり前のことであるがもっと確率が低いし、普通はそんな「チャンス」は訪れない。だから、現れた瞬間に掴むしかないし、いや、アデルの場合はもしかしたら、きっと女神があの大きな頼り甲斐のある肩に腰を下ろしてしまったのではないかと思う程である。その女神はアデルの前には誰のところにいたのか? 過去、40年以上に渡って、成功の後転落した余りにも沢山のミュージシャンを知っていると、そんなことばかり気になってしまうのである。


こちらから試聴できます。



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1 コメント

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はじめまして。。。 (メイル♪)
2012-02-22 00:36:31
はじめまして
TBをありがとうございました。

私の様な幼稚なブログと違って
専門家?と思うようなブログに訪問して
恐縮しております

マイペースで好きな音楽を更新しています

また、お越しくださいね!

これからもよろしくお願いします
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