音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

FALLING INTO YOU (セリーヌ・ディオン/1996年)

2010-11-10 | 女性ヴォーカル


実は日本にはこの類いのアーティストはとても少ない、所謂、エンタティナーと呼ばれる人たちである。音楽の形態でジャンル分けをするというよりも、寧ろ各々がジャンルみたいな人たちで、この人たちの扱いはミュージックショップでは区々だ。一般的にはポップス歌手なんかに入るのだが、出自も色々あって、ロックとかジャズは勿論、クラシックやボサノバ、カントリーなんかからも出ているし、ユーロ・ミュージックからの人も居る。

現代ではこのセリーヌ・ディオンがこのエンタティナーのトップクラスであろう。彼女はカナダ出身のアーティストであるが、最初はフランスで活動していたために彼女の楽曲には仏語版が多い。だが面白いことにそれが功を奏して、世界的なエンタティナーになったのであろう。彼女が世界的なスタアになったきっかけは、あの有名な「タイタニック」の主題歌"My Heart Will Go On"の大ヒットで英語圏にも認知されたことであるが、実は、このアルバムはその1年前の作品であり、その大スタアの片鱗と、このアルバムの構成そのものが、エンタティナーとしての一大ショウ(エンタティナーはコンサートでなくてショウ・もしくはステージなのだ・・・)の構成をしっかり取っている完成度の高さに個人的にはこのセリーヌの中ではこの作品が最も好きなのである。この作品はアメリカ版以外、各国版で少しずつ曲構成が違うが、"It's All Coming Back to Me Now"で始まり、"Fly"で終わっているところは統一されているので、それがショウの構成に見立てているのであるから特に問題はない。特に1曲目の壮大な曲構成と彼女のヴォーカルの統一観は素晴らしく、この時点でリスナーをグイグイ引きこんでしまう。そう、エンタティナーという人たちは1曲目から自分を出し惜しみにしないのだ。ここで引きつけられるかがそのショウを成功させるか否かに係っていることを良く知っている。この辺りは流石だと思うと同時にやはりこういうところは音楽家に関わらず誰もが見習はなくてはならないのは、日本人でいうところの一期一会の精神、人の時間を拝借しているとからこそベストを尽くすという姿勢であろう。音楽に関わらず、こういうことの頂点を極めた人ほどいうのが、観客一人ひとりへの気配りであり、常連ファンもいれば、今日初めて恋人につれてこられた人も、会社で嫌なことがあって気晴らしに来た人も、この日が誕生日で記念に来た人も、それぞれの人に最高の満足を持って帰って欲しいと願い、それを言葉にして、その有言実行として最高の歌をプレゼンする。それが出来る人、それで観客に最高の喜びを与えられる人が冒頭に書いたエンタティナーなのである。セリーヌはそれをショウだけではなく、アルバムでも試みた、それがこの作品なのである。私の大好きなエリック・カルメンの「オール・バイ・マイセルフ」(無論、オリジナルの方が良いが、この曲はスタンダード曲になっていて、マライヤも大ヒットさせた)も歌っていて、こういう部分が凄く嬉しい。

残念ながら日本にはこのエンタティナーという人が少ない。だが、過去には世界的な人、越路吹雪、美空ひばりというアーティストは日本が誇るエンタティナーである。男性なら森繁久弥であろう。でも日本にも可能性のある人は沢山いるし日本国内だけで(通用する)言えば現在も居ない訳ではないが。音楽と言えども、やはり言葉の壁は大きい。


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