音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ライク・ア・ヴァージン (マドンナ/1984年)

2010-10-26 | 女性ヴォーカル


世界中の女性ヴォーカリストの中で彼女ほど成功した人間はいないであろう。いや、もしかしたらミュージシャンに限定しなくても、世界で最も成功した女性と言われるかも知れない。100年後の世界史の教科書がどうなっているかは全く分からないが、恐らく彼女はそこに登場し、クレオパトラやジャンヌ・ダルクと同じ次元で扱われるのではないか。そう考えても全く不思議でないのが、彼女が音楽界に、いや、この地球上に残した功績であり、勿論、それは現在も更新中である。

この作品は彼女のセカンド・アルバムであるが、ファーストでもかなり注目はされていて、しかもこの「マドンナ」という聖母と同じ名前は音楽や容姿を知る前から可なりインパクトがあった。日本人からすると夏目漱石のヒロインくらいだったかも知れないが、私も幼稚園からミッション系だったからそういう意味では慣れ親しんだ名称なのでなんだろうかと思ったものだ。だが、この聖母名とそのギャップの決定打を放ったのはまさにこの「ライク・ア・ヴァージン」であった。マドンナの音楽は一言で言うと白人であるがソウルミュージックである。70年代の後半はディスコが新たな音楽発信基地になったが、80年代はMTVの隆盛で映像プロモーションが重要な要素になっていたために、マドンナはその音楽性もさることながら、映像マーケットを巧みに操ることも商業的に大成功した要因である。だが、ではもし彼女が映像的要素がなかったとしたら成功しなかったかというとそれは、マイケル・ジャクソンも同じようにNOであり、決して音楽だけだったとしても彼女の今日の成功はあったであろう。但し、エルビスやビートルズの時代と違って、世界への配信が早かっただけで、逆に配信が早いと、人の噂よりも確認できるのが早いから、実力がなかったり、プロモーターに恵まれないミュージシャンは潰れるのも早いのである。音楽界でスーパースターと言えるのは、エルビス、ビートルズ、マイケル、そしてこのマドンナの4組だけであり、まだまだこの人たちに追従できる人は居ないし、もしかしたらこれからも音楽という世界からは輩出されないかもしれない。その原点はファーストでなく、間違いなくこの作品にある。前作はかなり淡泊だった音楽が今回は多岐にわたりつつ、ヴォーカル自体にボリューム感が出てきたのだがこの年齢で急に変わる筈はない。これは多分にプロデューサーのナイル・ロジャーズの影響であろう。アメリカの音楽に詳しい人なら彼の名前を知らない人はいないが、そもそもはシックでディスコ・ブームの渦中にはヒット作品を連発。「おしゃれフリーク」は日本のディスコでもかかりまくった。彼はブロンディのプロデュースなどをしていたが、この作品と、デビット・ボウイーの「レッツ・ダンス」の大ヒットが、彼を80年代を代表するプロデューサーとしての高い評価を与えさせた。まだこの作品ではディスコサウンドが中心であるが、一方で今後に繋がる、ドラマ性を持ったヴォーカルはここでも披露していて、「マテリアル・ガール」やタイトル曲はその片鱗が窺える。

しかし、マドンナには常に悪い評価も付きまとう。例えば、この作品でまずマリリン・モンローの再来と言われたまでは良かった(モンローと反対側に黒子があった)が、過激なセクシー・ファッションを真似たWannaBe's(ワナビーズ)という少女たちが急増し、学校でも問題になった。それからずっと彼女はスキャンダルと共に生きることになったがここまで決して挫けることなく、音楽シーンのトップをひた走っている。この点に関しては幾らCDが売れても、マライヤやブリトニーには手の届かない地位に居続けるのが彼女の宿命なのであろう。


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