大地が闇と溶け合うところまで
枯草の疎らにへばりついた砂地が続く
井戸がただひとつ これを掘った部族は
古代史にさえ知られていない
折れた跳ね釣瓶に燐の月光
覗きこむ体が力を失ってそのまま落ちていきそうな深淵
叫んでみる声が自分の耳にさえ聞こえない
水は吸い込まれてしまったのだ 大地の底に
テントも集落も都市国家も
髪飾りの珠をきらめかせた娘たちも 昼も
吸い込まれてしまったのだ この虚空の奥に
以来 夜ばかりの悠久の時
銀河は氾濫して空を覆い尽し
その光の乱反射で
折れた跳ね釣瓶が井戸の周囲にあいまいな影を描く
何時 水は再び湧き出してくるか
何時 井戸は溢れ 大地は水で覆われ
銀河の氾濫を映して輝くか
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