すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

井戸

2022-09-24 10:35:03 | 詩集「黎明」

待ち続けていればいいのだ
古い井戸の傍らで
羊の皮を広げて
静かに座っていればいい
印を結ぶ必要はない
結跏するにも及ばない
ゆったりと楽にしているのが良い
いつまで待つかは分からないのだ

何ヵ月に一度か何十年に一度
疲れた旅人が水を求めてやってくるだろう
首を振って示してやればいい その井戸は
旅人のたどって来た丘が
まだそこになかった頃から枯れていることを
旅人は足を引きずって立ち去っていく
砂の上の足跡が消えてしまったら
また次の何十年かが過ぎる
北極星が幾たびか廻る
そのうちに君は
旅人がまったく来なくなったことすら忘れてしまうだろう

終日 風が荒れて
砂も雲も太陽も吹き消し
昼の光という光を吹き消してしまったあとで
君は聴くだろう
宇宙を埋め尽くしている
微かな通奏低音を
星々の生まれてくる源を
それは降りてきて大地を包み込んでしまう
この星が再び生まれるために

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