訪れるもののいない雪原に独り
樹は帆を広げて朝の太陽を孕んでいる
光の粒子は空を渡り 音もなく枝々に満ち
なおも零れ落ちてさざ波を描く
白い広がりに足跡をつけようとのぞむ冒険者がいても
向こう岸に着かないうちに呑みこまれて沈んでしまうだろう
彼は知らないのだ 自然そのものが海なのだということを
足跡はやがて消え去って 染みひとつ残らない
(連作「はるにれ」のうち 二月)
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訪れるもののいない雪原に独り
樹は帆を広げて朝の太陽を孕んでいる
光の粒子は空を渡り 音もなく枝々に満ち
なおも零れ落ちてさざ波を描く
白い広がりに足跡をつけようとのぞむ冒険者がいても
向こう岸に着かないうちに呑みこまれて沈んでしまうだろう
彼は知らないのだ 自然そのものが海なのだということを
足跡はやがて消え去って 染みひとつ残らない
(連作「はるにれ」のうち 二月)
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