夜の白む前
彼らはいっせいに鳴きはじめる
闇に沈んだ
花盛りのアーモンドの木のあたり
裏庭から野につづく窓を開けると
湿った冷気が部屋に流れ込む
雨の夜を彼らは
どこでどのように過ごすのか
夜明けの近いことを
何によって知るのか
飛ぶために食べ続けなければならず
食べるために飛び続けなければならない
羽毛に護られた42℃の体温と
空洞になった骨
昨日の雨と今日の雨の
わずかな時の間に
彼らは鳴きかわし 餌を探し
アーモンドが花から葉へ移る
わずかな時の間に
人は番い ささやかな巣をつくる
ぼくはもう 空を飛ぶすべを
身につけることはないだろう
夜が明ける
また今日の雨が始まる
鳴き声が止む
彼らはもう その枝にはいない
ボロ布をまるめたボールを蹴る少年
素焼きの壺に水を運ぶ
裸足の少女
生まれることのない
ぼくの子供たちを残して
今日ぼくはここを発つ
アーモンドの花で思い出した。ある時、半年間滞在したアルジェリアを発つ前の晩に書いた詩。自分が昔書いた詩の中では好きなものの一つだ。
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