すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

2022-06-14 21:20:24 | 社会・現代

戦場から逃れ出て
身を潜めた洞窟の
光の射さぬ暗い壁に
俺が殺した村人の
とりわけあの娘の
目の無い顔が浮かび上がる
・・あの引き鉄の感触が
今でも指に残っている

銃弾が至近距離で
高速度写真のように
ゆっくりと胸に食い込んでいった
迸った返り血が
俺の指や戦闘服を染めた
それが青黒い染みになって
指から拭い取れない

娘の開かぬままの唇が言う
ここにいてはならない
この入り口は間もなく岩に埋まる
このままお前が後悔の中で死ぬことも
懺悔に安らぎを得て死ぬことも
絶対に許さない

出て行くがいい
私はお前を許さないが
出て行くことは許可しよう
善き人々に混じって
外の明るい世界で
闇を抱えて独り
苦しみ抜くがいい

私の無念はお前の生きている限り
その額に罪の印として
刻まれていると思え
たとえお前自身には見えなくとも

死ぬ時が近付いたら
残る力を振り絞って
私を呼べ
お前の額の印を消すかどうか
その時に決めよう
その時を慄きながら待て

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