拠点広場の水はけを良くするための溝に一箇所だけ一斗升の容積を持った水溜りを作ってある。安全のために柵を渡してあるのだが、修理に立ち寄ったとき目に止まったのがあった。
それはヤゴの外皮だった。羽化したにしては「早いなあ」と思って覘いたのだが、水面に浮いているのは変だ。5cmはあったからヤンマの類だろう。
良く見たら水面下の茎に一匹摑まっているのが確認できた。羽化でなく脱皮の直後だったようだ。
実は、この水溜りは、わずかばかり雨水の溜まる窪みに生息していたイモリのために設置したもので、少なくとも五匹は投入してある場所だ。
翌日に見たら、更に二つ増えて三体の抜け殻が水面に浮いていたのだ。と言うことは複数生息していた、複数が生息越冬できる環境だったということになる。
水溜りの大きさから言ってヤゴが一匹でも冬を越して生存していることが信じられない。イモリがいないにしても生命を維持できる動物的餌が確保できる環境だとは思えない。信じられない光景だった。
しかし生存していたのは事実だから、小さな「水宇宙」の生態系は豊かと言えるのか、ヤゴが逞しいと言うべきなのか、ともかく生命力とは不思議だ。