トロルお爺の”Satoyaman”林住記

生物生産緑地にて里山栗栄太が記す尻まくりワールド戯作帳

**水は天からの贈り物

2024-09-23 | 温故痴新

      あしひきの山川の瀬増し寄せば命みな絶ゆ砂礫河床に

        あしひきの山川の瀬の響るなへに弓月が岳に雲立ち渡る  柿本人麻呂

      沢走る濁流により礫積もり災の河原となりにけるかも

        石ばしる垂水の上のさわらひの萌え出づる春になりにけるかも  志賀皇子

      ヤゴのため軍田の沢に水を得む十号台風砂礫に変えたり

        君がため山田の沢にゑぐ採むと雪消の水に裳の裾濡れぬ  作者未詳

      秋なのに猛暑居座り鳴く蝉に肝は凍れる胸中泣ける

        雪のうちに春は来にけり鶯の凍れる涙今やとくらむ  藤原高子

      沢の色は移りにけりな奔流に諸行無常と手当せし間に

        花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に  小野小町


**四方は春じゃ、余も貼るじゃ…

2024-04-06 | 温故痴新

      敷く布団月夜の部屋に人二人ありしと思はば何か嘆かん

      敷島の日本の国に人二人ありしと思はば何か嘆かむ  万葉集 作者不詳

 

      明日よりは黄砂降り止む標し空昨日も今日も花は散りゆく

      明日よりは春菜採まむと標し野に昨日も今日も雪は降りつつ  山部赤人

 

      春の沢薄紅散らすやまざくら渦に流るを立ち見る我は

      春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ少女  大伴家持

 

      春の里着けばはるけし姥捨ての朝谷渡り鳴くや鶯  

      朝床に聞けば遥けし射水川朝漕ぎしつつ唱う船人  大伴家持

 

      春来ぬと人はいへどもあかがえる産まぬかぎりはあらじとぞおもふ

      春来ぬと人はいへども鶯の鳴かぬかぎりはあらじとぞおもふ  壬生忠岑

 

      永田のケ闇は危うし言の葉の嘘こそ見えぬ香やも隠さる

      春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やは隠るる   凡河内躬恒

 

     昔印籠いま菌ばっじ身は恥まみれお代官 ハアコリャコリャ

     埒も無し畜材揃えば恥も無し袖から背負子に蓄財の術

     四方春じゃ余も貼る者よ惑ん己にあいたいあいたい湿布貼る春  トロルお爺 

 


*両翁ごめんなさい…

2023-10-09 | 温故痴新

              罪深し隣も割を喰う客だ

             秋深き隣りは何をする人ぞ    芭蕉

              割れ無きも捨てるは親の遺品なり

             我と来て遊べや親のない雀    芭蕉

              これ蝦蟇やついに産卵引き五尺

             是がまあつひの栖か雪五尺    芭蕉

              ハルサメや喰われ残りは鍋の縁

             春雨や喰われ残りの鴨が鳴く   芭蕉

              旅は止め夢はコロナでかき消され

             旅に病で夢は枯野をかけ廻る   芭蕉

              痩せガエル負けるわ一切拒食症

             痩せ蛙まけるな一茶是に有り   一茶

              お目出度き衆喰らいつく詐欺メール

             目出度さもちう位なりおらが春  一茶

       

        


**夕暮さまのさみだれにやまほととぎす名乗るなり

2023-08-18 | 温故痴新

        昨日といひ今日と流れて吉田川よしあしまにまに浮世なればや

         昨日といひ今日と暮してあすか川流れてはやき月日なりけり      泰道列樹 

 

        いといつも呆けし我が身やむばたまの昼夜ころもをあれ裏表

         いとせめて恋しき時はむばたまの夜の衣を返してぞ着る        小野小町 

 

        偽りの盛れる世ゆえにいかばかりめいるの言の葉滅入るなりけり

         偽りのなき世なりせばいかばかり人の言の葉うれしからまし       よみ人知らず

 

        人の親の心は闇にあらねども孫に祖父母は節操ありや

         人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道に惑いぬるかな       藤原兼輔

 

        余を捨てて山に居る人山にても猶浮きときは打ち出の小槌

         世を捨てて山に入る人山にても猶憂き時はいづちゆくらむ      凡河内躬恒

 

             


**花たちばなも匂うなり軒のあやめも薫るなり

2023-08-15 | 温故痴新

          季節ごと虫の盛りはありなめどあい見むことはみこころのまま

           春ごとに花の盛りはありなめどあい見むことは命なりけり          よみ人知らず

 

          北麓をただ抜けつればサンコウチョウ森の中ほど鳴いて止まじや

           音羽山けさ越えくればほととぎす梢はるかに今ぞ鳴くなる         紀貫之

 

          秋の野にふとすずむしの声すなり我ただ寄りぬ声の止むまで

           秋の野に人まつ虫の声すなり我かと行きていざとぶらはむ         よみ人知らず

 

          ひぐらしの鳴きつる声に日は暮れてその日暮らしの我もかなかな

           ひぐらしの鳴きつるなへに日は暮れめと思ふは山のかげにぞありける   よみ人知らず


**春のやよいのあけぼのに四方の山辺を見わたせば

2023-08-13 | 温故痴新

       人去りて青葉の山で鳴く鳥は四方の山辺へ奏で奏でる

          夕されば小倉の山に鳴く鹿は今宵は鳴かずい寝にけらしも    欽明天皇

 

         もの呆けの八十爺爺の飲み干せる框の上の麦茶の土瓶

          もののふの八十少女らが汲みまがふ寺井の上の堅香子の花   大伴家持

 

         春の日の光にあたる我なれどかしらの雪は失せて久しき

          春の日の光にあたる我なれどかしらの雪となるぞわびしき     文屋康秀

 

         虫のため春の池入り泥土抜く我が皺顔に泥は跳ね跳ね

          君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ   光孝天皇

 

        


**わがよ更けゆく月影のかたぶく見るこそあわれなれ

2023-08-11 | 温故痴新

          さ夜中と夜は更けぬらし御不浄の仰ぐ空には渡る月あり

           さ夜中と夜は更けぬらし雁が音の聞こゆる空に月渡る見ゆ      柿本人麻呂

 

          蒸すし夜寝返るままにカネタタキつれづれに鳴く夜の明けるまで

           夏の夜の臥すかとすればほととぎす鳴く一声に明くるしののめ    紀貫之

 

          浮きことを思いつらねて借りた金鳴き言鳴き寝秋のなよなよ

           憂きことを思いつらねてかりがねの鳴きこそ渡れ秋のよなよな    凡河内躬恒

 

          起きもせず寝もせで夜を明かす身は呆けし身ゆえに事はわからず

           起きもせず寝もせで夜を明かしては春のものとて眺め暮しつ    在原業平


**秋の初めになりぬれば今年も半ばはすぎにけり

2023-08-09 | 温故痴新

        人も来ぬ熱暑の山は草いきれ作業はまさに火山針山                                                  

         人もなき空しき家は草枕旅にまさりて苦しかりけり           大伴旅人

 

        山青葉ウツギ花散る久々に花の絨毯踏みし入る山

         わが園に梅の花散るひさかたの天より雪の流れ来るかも       大伴旅人

 

        沼傍の草露崩し密やかに羽化すアカネを見るは眼福

         ぬばたまの夜霧の立ちておほほしく照れる月夜の見れば悲しさ  大伴坂上郎女

        

        夏の野の繁みに潜むキリギリス猛暑なるゆえ聴く音涼しき

         夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものそ    大伴坂上郎女

    

 

 


**春や春 腰肩張る張る 膏薬貼る貼る 貼るや春・・・

2023-04-21 | 温故痴新
           夕されば谷田の泥地に鳴く蝦蟇は今夜は鳴かず時とて猛る
            夕されば小倉の山に鳴く鹿は今夜は鳴かず寝ねにけらしも   舒明天皇

           池の傍振り向き見れば萌え草に蝦蟇はながなが引きたる卵を
            天の原振り放け見れば大君の御寿は長く天足らしたり     倭大后

           寒すぎて服着たるかな白ボアの襟に指さす今日の花冷え
            春過ぎて夏来たるらし白栲の衣干したり天の香久山      持統天皇

           沢つたう泥地の池で産む蝦蟇は姿今日のみ明日は隠れめ
            ももづたふ磐余の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ   大津皇子

           東の樹にさえずりの影見えてかへり見すれば小首傾げぬ
            東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ  柿本人麻呂

**穀倉の大地、献花スノードロップ

2023-03-23 | 温故痴新
           幼子ら降る砲弾下地下室の長き長きを堪えし今日も
            娘子らが袖布留山の瑞垣の久しき時ゆ思ひき我は          巻四・五〇一  柿本人麻呂

           この世にし平和にあらば来む世には麦にも土にも我はなり南無
            この世にし楽しくあらば来む世には虫にも鳥にも我はなりなむ    巻三・三四八  大伴旅人

           意の中は惨き者ぞと知る時しいよいよますます守り固めよ
            世の中は空しきものと知る時しいよいよますます悲しかりけり    巻五・七九三  大伴旅人

           沫雪の弾着痕に降り敷けば首都の家族を思ほゆるなり
            沫雪のほどろほどろに降り敷けば奈良の都し思ほゆるかも     巻八・一六三九  大伴旅人

           黒髪が白くなりたる一夜でも国土守るぞ撃ちてし止まん
            黒髪に白髪交じり老ゆるまでかかる恋にはいまだあはなくに    巻四・五六三   大伴坂上郎

           ゲヘナとな東部の街は最弱者屠る侵軍今盛りなり
            あをによし奈良の都は咲く花のにほふがごとく今盛りなり     巻三・三二八   小野老

           避難所を撃ち崩されて這い出せば瓦礫の下に命ありける
            田子の浦ゆうち出でて見れば真白にそ不尽の高嶺に雪は降りける  巻三・三一八   山部赤人

           東の野に砲煙の立つ見えて返り見すれば街傾きぬ
            東の野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ         巻一・四八   柿本人麻呂

           七重八重弾は炸裂反撃の砲ひとつだに増えずかなしき
            七重八重花はさけども山吹のみのひとつだになきぞあやしき    雑五・一一五四  兼明親王




**私本「こきんしゅう」寒中余話の段

2023-01-20 | 温故痴新
         寒の日の泥田にダイブ我なれどカメラお釈迦となるはかなしも
          春の日の光にあたる我なれどかしらの雪となるぞわびしき     古今集・文尾康秀

         寒の田に転べば泥の飛沫立ち花なきあぜの霜に散りけり
          かすみ立ち木の芽もはるの雪降れば花なき里も花ぞ散りける    古今集・紀貫之

         ヤゴのため霜の田に入り泥を打つ我が足指はアカネのごとし
          君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ     古今集・光孝天皇

         我だけで誰にも見せぬ泥まみれ田んぼ沈した知る人ぞ無し
          君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をも知る人ぞ知る      古今集・紀友則
          
         ひさかたの光さえざえ寒の日に氷割りつつ爺は散りなむ
          ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ      古今集・紀友則

         泥の色うつりにけりな六尺の我がみ田に落つ悶えせぬ間に
          花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に 古今集・小野小町

         服ひちて絞りし水は凍れるも寒入る今日の風のやさしさ
          袖ひちてむすびし水の凍れるを春立つこの日風やとくらむ     古今集・紀貫之


※ 表題の「こきんしゅう」、感字三案あったのだがいかにも妖しく不適切でイチジクの葉も無く、泣く泣くひらがな表記とした。我が心を汲んでくだされ!

**秋津唱

2022-11-30 | 温故痴新
         今日よりは木枯らし強く吹きなむをいかにす孤爺アキツいぬ日々
          今よりは秋風寒く吹きなむをいかにかひとり長き夜を寝む        大伴家持

         裸木や山の木枯らし吹き曝しマユタテ消えて侘し寂しも
          あしひきの山の嵐は吹かねども君なき夕はかれて寒しも         詠み人しらず

         アカネ飛ぶトンボ池行き野池行き池守見るやトンボ水打つ
          あかねさす紫野行き標行き野守は見ずや君が袖振る           額田王

         クロギンもアカネもオニも何せむに優れる宝種の多様性
          銀も金も何せむに優れる宝子に及かめやも               山上憶良

         夏池の真茎に休むテネラルの知らえぬ羽化は苦しきと見ゆ
          夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものそ        大伴坂上郎女

         あしひきの山の紅葉を染め移し散りし落ち葉にアカネ点描
          あしひきの山の黄葉にしづくあひて散らむ山路を君が越えまく      大伴家持

         マユタテの待ち喜ぶる小春日にアカネと我はひねもすのたり
          こほろぎの待ち喜ぶ秋の夜を寝る験なし枕と我は            詠み人しらず

         大雪や谷田に秋津は消え果てて枯葉舞い上ぐ裸木高く       トロルお爺

         谷地の空灰色の空風花に秋津散る散る雪子舞う舞う        千恵子

**小雪やこんこ大雪こんこ

2022-11-24 | 温故痴新
      冬の夜はまだ宵ながら寝床行き浮かぶつれづれ夢か真か
       夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらむ    古今集・清原深養父

      里山の畑蹴散らし去る猪の跡見る時ぞ今日も腹立つ
       奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき       古今集・よみ人知らず

      暮るれば温き布団へ冬の夜は目覚めて惑う小用足しかな
       暮るるかとみれば明けぬる夏の夜をあかずとや鳴く山ほととぎす 古今集・壬生忠岑

      見る人もなき里山のもみじ雨すべて洗われ後は裸木
       見る人もなき山里の桜花ほかの散りなむ後ぞ咲かまし      古今集・伊勢

      孫のため秋の野に出でて紅葉得るこの萎えし身にいばら爪立つ
       君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ    古今集・光孝天皇

      世の中に絶えて戦のなかりせば民の心はのどけからまし
       世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし     古今集・在原業平

**日々是好日

2022-08-09 | 温故痴新
          忍ぶれど臭い出でけりわが身体災事あるらん問われ恥ずかし
           忍ぶれど色に出でけりわが恋は物や思うと人の問うまで     平兼盛

          何んとなし飽き間に宿る憑き見ればわが身ひとつも業の波間に
           難波江の葦間に宿る月見ればわが身ひとつもしづまざりけり   藤原顕輔

          盛り場の誰ムクドリの喚き酒帰ります間も広げるコロナ
           春山の友ウグイスの鳴き別れ帰ります間も思ほせ我を      柿本人麻呂

          老いた身の頭に生える白髪のさびしき秋になりにけるかな
           大比叡の峯に夕ゐる白雲のさびしき秋になりにけるかな     八田友紀

          この面はまだ乾かぬぞ腹立ちのゲリラ降雨の拠りし屋根下
           庭の面まだ乾かぬに夕立の空さりげなく澄める月かな      源頼政

**今日の替え歌「所業無常」

2022-06-16 | 温故痴新
          見渡せば人も住処も消え失せり
                    侵略地帯の初夏の憂暮れ
           見渡せば花も紅葉もなかりけり
                    浦の苫屋の秋の夕暮れ       藤原定家


          身を潜め窺い見ればミサイルで
                    郷の住居は跡形も無し
           高き屋に上りて見れば煙立つ
                    民のかまどはにぎはひにけり    仁徳天皇

          
          もののふの装備つくろふ壕の上
                    火炎たばしる夏の麦原
           もののふの矢並つくろふ籠の上
                    霰たばしる那須の篠原       源実朝


          山の辺に描くいくすじの巡航弾
                    かすめる果ては阿鼻と叫喚
           山の端も消えていくへの夕霞
                    かすめるはては雨になりぬる    伏見院