【衝撃】社交ダンス ルンバのコネクション これ知らないで踊ってたの?TOP3
「アンテナを立てて待ってるよ」。まだ携帯電話に伸び縮みするアンテナがあった二十年ほど前だったか。カズことサッカーの三浦知良選手が、言っていた。いつ日本代表監督から、呼び出しがあってもいいように準備するよという意味だ▼なかば冗談としてその言葉を聞いたのを思い出す。ワールドカップフランス大会直前に代表から漏れて以降、所属クラブと契約できず、移籍先でも戦力外を告げられた。年を追って、過去の選手になったという声が、選手の間で大きくなっていた頃だったから、滑稽さがぬぐえなかった▼間違いであった。渡り歩く先々で、若手、ベテラン、外国人選手が、うちとけることはないと思われたプライドの高い選手が、次々にカズさんに引きつけられていったのがこの頃である。弱音を吐かず、年齢を言い訳にせず、全力で試合に向けて調整する。下り坂に入ったと見えても、本気で上を目指し続けた▼代表での活躍からは遠ざかってきたが、ずっと準備をし続けた結果であろう。先日、国内最高峰のJリーグ一部で十三年ぶりに試合出場した▼最年長記録となる五十三歳だ。プレーにはこれまで積み重ねてきた努力が表れていただろう。なぜ人を引きつけるのかが伝わる堂々のプレーであった▼アンテナを下げず、そのための努力を続けていけばこんな日も来る。そんなことも教わったように思う。
怪しげなこと、力をたのむこと、世を乱すようなこと、鬼神に関することを、孔子は語らなかった。論語にいう<怪力乱神を語らず>は、後世に伝えられている。立派な人物は、理性で説明できないことを口にすべきではないという戒めである▼孔子の時代からおよそ千数百年後にも、戒めは生きていたようだ。吉田兼好は<とにもかくにも、虚言(そらごと)多き世なり>と、うそや根拠のない話ばかりの世の中を嘆きつつ、<よき人はあやしき事を語らず>と徒然草に書いている▼人の性質も虚言の多い世も、どれほど時がたとうと簡単に変わらないものらしい。先日発表があったイグ・ノーベル賞で「医学教育賞」の受賞者にトランプ米大統領ら九カ国の首脳が選ばれた。コロナ禍のなか、あやしき事を語ってきた顔ぶれが並んでいる▼ウイルスは「奇跡のように消滅する」と言い、抗マラリア薬の効果をうたっているトランプ氏のほか、コロナは「ちょっとした風邪」のブラジル大統領、ウオッカが効くと言ったベラルーシの大統領もいる。思えば、国の大小を問わず首脳の言動が世を乱すことの多いこの半年余りだ▼授賞理由は「政治家が学者や医師よりも生死に影響を及ぼすことを知らしめた」だそうだ。笑って考えさせる賞の皮肉は効いている▼さほど大きなニュースにならなかったようだが、後世に伝えるのには有意義な賞だろう。
現在、米国のハーバード大学ロースクール学生の男女比率はだいたい同じだそうだ▼一九五六年にその女性が入学した時は男性五百人以上に対して女性はわずか九人。教授の質問に答える時は緊張した。もし自分が失敗すれば女性全体の能力を疑わせることになる。その考えはずっと変わらなかったのかもしれない。米連邦最高裁のルース・ギンズバーグ判事が亡くなった。八十七歳▼大学教授、弁護士、判事の経歴を通じ取り組んだのはロースクールに限らず、法の下での平等が約束している通り、あらゆる分野で「男女比率」を同じにすることだったのだろう。賃金差別の解消、機会均等。その取り組みと主張は米国のみならず世界の目を覚まさせた▼子ども時分、母親に「レディーであれ、自立した人間であれ」と教えられたそうだ。鋭い意見で「ノトーリアス(悪名高き)」の愛称もあったが、決して感情的にならず、地道な説得によって社会をより良き方向へと一歩ずつ進めていく。それが思慮深い「レディー」の方法だった▼リベラル派だが、最高裁の同僚では保守派の故スカリア判事と仲が良かった。どんなに意見が違っても友情をはぐくめる。話し合える。小柄だが心の大柄な方だった▼議論に勝つ方法を教えている。「大声を出さないこと」。大声を出せば相手と話し合えない。意見対立の時代に大切な教えである【公式】『ビリーブ 未来への大逆転』3.22(金)公開/予告
Sarah Bernhardt 1903 - déclamation française
広島の山奥深くに不思議な集落があるという。政府の「官員さん」が訪ねると、帯刀、ちょんまげの男が出てきて言った。<もう、源氏は亡(ほろ)びたか>。作家火野葦平が父母の半生を描いた『花と龍』の冒頭、葦平の祖父が伝え聞いた話として語る。隠れ住む平家の子孫の「話」である▼集落の存在は<国勢調査>で初めて分かったとも言う。第一回国勢調査は一九二〇(大正九)年に実施されている。総務省が近年発行した小冊子によれば、当時、同じような話が、よそにもあった。平家はともかく、各地で集落が本当に見つかったのだという▼日本が一等国に仲間入りするため−そんな宣伝もあり、第一回はたいへんな熱気に包まれていた。知られざる集落の“発見”も熱の一部であっただろう▼数えて二十一回目の国勢調査が始まった。百年の節目の調査は、もちろん昔のような盛り上がりに遠い。代わって百年前にはない難しさに向き合っているようだ▼個人情報を答えたくない人が増え、単身世帯などの多さも調査には逆風である。高齢の調査員がコロナ禍で辞退する例も多いそうだ。変わる国の姿が、調査の精度への不安材料となっている▼五年前の前回調査で人口は初めて減少した。国勢とは「国の情勢」のことらしいが、「国衰」を思う結果が待つかもしれない。再び勢いを取り戻すために知る必要のある姿でもあろう。