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今日の筆洗

2020年09月18日 | Weblog

 広島の山奥深くに不思議な集落があるという。政府の「官員さん」が訪ねると、帯刀、ちょんまげの男が出てきて言った。<もう、源氏は亡(ほろ)びたか>。作家火野葦平が父母の半生を描いた『花と龍』の冒頭、葦平の祖父が伝え聞いた話として語る。隠れ住む平家の子孫の「話」である▼集落の存在は<国勢調査>で初めて分かったとも言う。第一回国勢調査は一九二〇(大正九)年に実施されている。総務省が近年発行した小冊子によれば、当時、同じような話が、よそにもあった。平家はともかく、各地で集落が本当に見つかったのだという▼日本が一等国に仲間入りするため−そんな宣伝もあり、第一回はたいへんな熱気に包まれていた。知られざる集落の“発見”も熱の一部であっただろう▼数えて二十一回目の国勢調査が始まった。百年の節目の調査は、もちろん昔のような盛り上がりに遠い。代わって百年前にはない難しさに向き合っているようだ▼個人情報を答えたくない人が増え、単身世帯などの多さも調査には逆風である。高齢の調査員がコロナ禍で辞退する例も多いそうだ。変わる国の姿が、調査の精度への不安材料となっている▼五年前の前回調査で人口は初めて減少した。国勢とは「国の情勢」のことらしいが、「国衰」を思う結果が待つかもしれない。再び勢いを取り戻すために知る必要のある姿でもあろう。