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今日の筆洗

2020年09月15日 | Weblog

 一九七〇年代、地方に住む小学生にとって「アディダス」は憧れのブランドであった。ある年の冬、アディダスのウインドブレーカーがわが町の子どもたちの間で大流行した。人気で手に入らない▼母親が「あった、あった」と騒いでいる。手に取ってみれば、胸のマークはアディダス(adidas)ではなくアディドス(adidos)。当時の少年なら覚えているだろう。同年代の友人によるとアディオス(adios)という、人を食った名のもあったらしい。スペイン語で「さようなら」である▼母親の悲しそうな顔を思い出したと書けば、新総裁の門出には失礼か。自民党総裁選は案の定、菅官房長官が当選した▼煎じ詰めれば、この総裁選、党内の判断材料は三候補のうち、誰が最も安倍さんの政治に似ているか−だったのかもしれぬ。国政選挙で負けなしだった安倍さんの政治を継承しておけば、一定の支持は期待でき、別の方向に向かうことはない。そうした党内の甘い空気が「アベデス」そっくりの「スガデス」を選ばせたのだろう▼心配なのは、政策ばかりか、説明不足や弱者への目配り不足といった本家の悪い「クセ」まで似せようとしてはいないかという点である▼安倍政権の過ちは改め、物まねでなく自身の政治カラーを打ち立てたい。さもなくば、案外早く「アディオス」ということにもなりかねない。