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今日の筆洗

2020年07月04日 | Weblog

 静かに広がった小さな傷が、丈夫そうな器を壊してしまうことがあるらしい。見えないひびが走る花瓶を人の心に重ねた詩が、ノーベル文学賞の初代受賞者でもあるフランスの詩人プリュドムの代表作にある▼<人の目にはいつも無疵(むきず)に見えていても/ほそいけど深いその傷はふえてきて/低い声で泣いているのがわかるの/そこに触らないでね、壊れているのよ>(『こわれた花瓶』)。見えない傷がたくさん走っていないか。花瓶に限らず、心するべき時があるだろう▼一昨日の百七人に続いて、昨日の百二十四人。これほど広がっていたのかと、首都で新たに確認された新型コロナウイルス感染の人数に、驚いた方も多いはずだ。街に昔の景色が、かなり戻ってきたように見えていたその背後で、見えないひびが走るように、感染は広がっていたようである▼無症状も多いという若者の割合が高い。想像を超えて感染が広がる一因だろう。夜の繁華街が、感染拡大の場所になっている。業種をしぼった対策の要請などが必要か。経済再開を急ぎすぎてはいけないと求められているようにも思える▼病気というものは、<早く治せんとして、いそげば、かへつて、あやまりて病をます>。江戸期の儒者、貝原益軒の『養生訓』にもそんな言葉がある▼ウイルス禍の社会もそうだろう。傷ついた器を壊さないよう用心する時のようだ。


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