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今日の筆洗

2024年09月14日 | Weblog

作家、登山家の深田久弥は著書『日本百名山』で富士山について「おそらくこれほど多く語られ、歌われ、描かれた山は、世界にもないだろう」と書いている▼老いも若きも男も女も、あらゆる階級、職業の人々が登る。子どもの時から富士の歌を歌う▼どんな山にも一癖あるものだが、富士は東西南北どこから見ても美しく整っており、ただ単純で大きいとして深田はそれを「偉大なる通俗」と呼んだ。大きな単純は万人向きで、何人をも拒まぬ代わりに何人も究極の真理をつかみあぐねる。幼い子も富士の絵を描くが、その真の表現には画壇の巨匠もてこずる▼本来は万人を拒まぬ山だが、安全のためには制限もやむを得ないのだろう。静岡県が、条例による登山の規制や入山料(通行料)徴収を来年の夏山シーズンから導入することを検討している▼今年の夏山シーズンは終わったが、山梨県が通行料徴収や夜間の入山制限などを始めたところ、夜通しで一気に登頂する「弾丸登山」が減ったそうだ。これら無理な登山は外国人観光客らにみられるが、遭難にもつながる。静岡が足並みをそろえるのも自然な成り行きだろう▼深田はこうも書いた。「富士山は万人の摂取に任せて、しかも何者にも許さない何物かをそなえて、永久に大きくそびえている」。何者にも許さない何物かをそなえた厳しい山である。なめてはいけない。