「ねえ、こんなにたくさん、どうするの?」。冷蔵庫の脇にしまい込まれていた大量の紙袋を見つけた娘が老いた母親に尋ねる。母親が面倒くさそうに答える。「なにかのときにないと、困るからさあ…」。是枝裕和監督の「歩いても歩いても」(二〇〇八年)にそんな場面があった▼決めつける気はないが、母親というものはなんでも大切にとっておきたがる傾向があるのか。紙袋、包装紙、リボン…。もったいないからまだ使えるからとしまい込む▼知り合いが、亡くなった母親の家を片付けていてびっくりするほど大量のレジ袋を発見したそうだ。あきれると同時になんだか申し訳ない気分になったと言っていたが、よく分かる▼スーパーやコンビニなどでレジ袋の有料化が始まった。映画では紙袋だったが、あの母親なら「ほら、とっておいてよかったじゃない」と言うだろう。無料だったレジ袋に数円かかる。むざむざ支払うのはやはりシャクである▼有料化でレジ袋の量を減らし、プラスチックごみによる海洋汚染を防ぐ試みである。レジ袋が消えるわけではなく、汚染防止にどこまで効果があるのか分からぬが、これでプラスチックごみを減らす意識が高まればよい▼もったいないのでマイバッグを使いたい。もったいないのはレジ袋に数円を払うこと。それにかけがえのない海をプラスチックごみで汚すことである。
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