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今日の筆洗

2022年11月09日 | Weblog

家のカキを子どもが食べすぎて疫痢にかかり、亡くなる。家族はたまらなかっただろう。祖父は孫の仇(かたき)だとカキの木を切り倒す。壺井栄の『柿の木のある家』である▼この話を聞いた男の子。自分は食べすぎないから、カキの木を切らないでと母親に願う。<あのりっぱな柿の木をきられたらたいへんだ>−▼カキの実もそろそろおしまいのころか。熟れた実の甘ったるいにおいやわずかに残った実を抱えた枯れ枝の寂しさを思う。<里古りて柿の木持たぬ家もなし>芭蕉。日本の晩秋の風景にカキの木は欠かせまい▼『柿の木のある家』はカキの木がそこに暮らす家族を静かに見守っているような物語だったが、その家族が一人また一人と消えてしまったら。そんな想像をする。人口減や高齢化の加速によって。木になったまま放置されるカキの実の話を耳にするようになって久しい▼問題がある。実にひきつけられ、クマが人里にやって来てしまうらしい。人に代わって秋の味を堪能しているのか。つい見逃したくもなるが、危険極まりない話で、クマが出没する地域では、管理できないカキの木はどうしたって切らなければならなくなる▼<柿の木の下をいったりきたり、一家は毎日、柿の木に見守られた日々をおくっているわけです>。あの物語の一節に切られる柿の木がかつて見た家族の生活を思う。晩秋が一層寂しくなる。


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