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今日の筆洗

2020年08月12日 | Weblog

 幕開けとともに現れた魔女たちが言う。<きれいは汚い、汚いはきれい>。シェークスピア『マクベス』の有名なせりふである。さまざまな意味に読み取れる言葉だが、王となるマクベスの血塗られた栄光の始まりと悲劇的な転落への予言にも思えよう。王たちの光と影はシェークスピアがえがいたものの一つでもある▼栄光と転落の王の物語は、舞台の上だけのものでも、中世の王様だけのものでもないらしい。スペインで、前国王フアン・カルロス一世が国外に脱出したという。亡命ともみられている▼一時は最も国民に愛されている王とたたえられた人に、巨額を国外から受けた汚職疑惑が浮上していたという。八十二歳の出国である▼半生は波乱に富む。一族の亡命先のローマで生まれた。独裁者フランコの時代に十歳で人質のように、スペインに送られ、フランコの将来の“駒”とも言われた。ところが王になると民主主義の擁護者としてふるまう▼軍部のクーデターの阻止にも動いた。命がけだったとも言われ、語り草だ。きれいにみえた民主主義の守り手に金銭疑惑など汚い話が相次ぐのは、十年近く前、経済危機が国に訪れた頃からだった。厳しい目が向けられ退位している▼余生をどこで送るかは明らかではないという。「終わりよければすべてよし」にはなりそうにない。栄光の座の無常を思わせる晩年であろう。


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