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今日の筆洗

2019年05月30日 | Weblog

「最初と最後に(高倉)健さんの歌があって、立ち回りがあれば、途中はどうでもいい」。「網走番外地」シリーズを担当するにあたってその監督は映画会社の幹部からそう言われたそうである▼監督は憤慨した。当然である。途中はどうでもいいなら映画は成立しない。だが、映画館で健さんの映画を見て、おえらいさんの言葉は真実だと思った。映画の冒頭は大拍手だが、途中では客の何人かは居眠りをする。そう思っているとラスト近く、健さんの立ち回りになると起きだして、「待ってました」と声をかける。こんな魅力ある俳優はどこにもいない▼「駅 STATION」「冬の華」など健さん映画監督の降旗康男さんが亡くなった。八十四歳。「途中はどうでもいい」ではなく、ずっと見ていたい健さんと物語を描いた監督である▼「怒鳴ったりする姿を見たことがない」。健さんが降旗さんについてこんなことを書いていた。ただ仕事をきちんと見ている。監督に認められたいと俳優もスタッフも必死になって自分から走り回る。そういう現場だったそうだ▼「キハ(気動車)の笛には泣かされるもんな。わけもないけど、聞いてて涙が出てくるんだわ」。「鉄道員(ぽっぽや)」にそんなセリフがあった▼丁寧で誠実な仕事と作品に、長く険しい坂を着実に進んでいく「キハ」を連想する。今、駅に入っていった。

 
 

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