1年間の禁酒を約束した男がいる。が、どうしても、お酒を飲みたい。そこで夜だけ飲むことにして代わりに「禁酒期間」を2年間に延ばした。友人がさらに提案する。「禁酒期間」を3年にすることにして、昼も夜も飲めることにしたらどうか。おなじみの小咄(こばなし)だろう▼期間を延ばしても、これでは禁酒にはならない。妙な理屈をこしらえては決めたことを破ってしまう人の弱さがおかしくも、悲しい▼心配性の小欄は時代があの男と同じ道をたどっているような気になってしまう。「禁酒」ではなく、戦後日本が立てた「平和主義」という決めごとである。日英伊3カ国で共同開発する次期戦闘機を巡る問題で、自民、公明両党は日本から第三国への輸出を解禁することで合意した▼武器輸出三原則さえ遠い昔で、時代を追うごとに武器輸出に抑制的な方針は弱められ、とうとう人をあやめる戦闘機まで輸出する国となる▼輸出したい事情や理屈はもちろんある。安全保障環境は緊迫化しており、高性能の戦闘機で備えたい。生産コストを抑えるため第三国への輸出を認めなければ共同開発がうまく進まない-。ただ、どんなに理屈を並べ、条件を加えようとも紛争を助長しかねない戦闘機を輸出できるのであれば、「平和主義」という国の決めごとは怪しかろう▼禁酒中と言いつつ、昼夜なく、だらしなく酒をあおる男が見える。
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