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今日の筆洗

2024年03月15日 | Weblog

 巣立ちの春。大手ハンバーガーチェーンの新CMはなかなか秀逸で、上京した若い女性が慣れぬ都会で店を見かけて入り、ほっとする▼古里にある店で家族と語らった思い出が懐かしい。ナレーションが心中を伝える。「何もかもが違う街。でもここは地元と同じ匂いがした」。どこでも同じ味という安心感は、この会社の強みなのだろう▼規模は劣るが、特定の地でのみ味わえる外食チェーンもある。「炭焼きレストランさわやか」もそう。34店舗は全て静岡県内にある▼事業拡大期に店の質が落ちたと投書が来て、無理な出店を控えるようになった。丸くて大きい牛肉100%の「げんこつハンバーグ」などが看板で、県西部の磐田出身の俳優長沢まさみさんもファン。テレビで紹介されたこともあり県外での知名度も高く、東京や愛知の人も店の行列に加わる▼創業者の富田重之さんが87歳で亡くなった。若い頃に結核を患い、食は命を支えると40歳で1号店開店。命を授けてくれたのは両親だと、丸く大きい看板メニューは親の愛情を表現したという。なるほど揺るがぬ親の愛だと言われれば、あの歯応えも納得できる▼以前の講演で「最大のライバルは家庭の食事」と語った。「たまには行こう」と大切な人と足を運び、思い出を刻むだんらんの場でありたい。規模の大小を問わず、外食に携わる者なら共鳴する哲学だろう。